離婚における不動産売却

2020-12-14

【離婚と持ち家】住宅ローン残債があるときの財産分与方法

夫婦が離婚する場合、「財産分与」を行う必要があり、持ち家も分与の対象となります。 持ち家の財産分与は、ローン残債やローンの名義によって財産分与の方法が異なります。

そこで今回は、ローンの残債がある持ち家の財産分与方法を、ローンの扱い方を考えながら説明していきます。

  • 法律的には婚姻中に夫婦が築いた財産は夫婦の共有財産となり、夫婦がそれぞれ2分の1ずつの実質的な持ち分を有する
  • 財産分与によって家の権利を受ける場合、財産分与請求権に基づいて相手側から権利を受けるものと考えられているので、基本的に贈与税はかからない
  • 調停と裁判のどちらで財産分与について決めていくかは、当事者どうしで話し合える余地があるか否かで判断すべき
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目次

    ローン名義人が誰かによって、財産分与の方法や内容は変化するの?

    ローン名義人が、共同名義か単独(夫名義や妻名義)のどちらかで財産分与の方法は変わってくるため注意が必要です。

    • 共同名義
    • 夫名義
    • 妻名義

    ローンが夫婦どちらか一方の名義の場合

    離婚して夫婦が別々に暮らすことになるため、持ち家を売却し換価しない限り、夫婦どちらかが、財産分与で家を取得することになります。

    同時に、今後ローンをどのように支払っていくか、決める必要があります。

    ■夫が不動産とローンの名義人で、財産分与で持ち家を取得するのも夫の場合

    不動産名義人とローンの名義人が夫で、財産分与によって持ち家を取得するのも夫の場合、特に手続きをする必要はありません。

    ローンも、持ち家を取得する夫がそのまま支払うことになるため、問題ありません。

    ■妻が財産分与で持ち家を取得する場合

    妻が財産分与で持ち家を取得する場合、ローンの支払いについて問題が生じます。

    持ち家の権利を取得する妻がローンの支払いも引き受ける場合、ローンの名義を夫から妻に変更することが必要です。

    この際に、借入先の金融機関の承諾が必要です。

    ローンの名義人を変更できない場合もある

    妻に安定した仕事があり収入を得ていれば、承諾を受け、ローンの名義を妻へ変更できます。

    しかし、専業主婦やパートの場合は承諾を受けられず、名義の変更ができません。

    このような場合、住宅ローンの名義は夫のままで、妻がローンを支払うという内容の合意を夫婦間で行います。

    ただし、具体的な支払い方法を夫婦間で決めておかないと後々トラブルになることがあるので注意が必要です。

    また、持ち家の購入時、頭金やローンの支払いを妻がしていない場合なども、財産分与によって妻が持ち家の権利を取得できるのかという問題があります。

    しかし、法律的には婚姻中に夫婦が築いた財産は夫婦の共有財産となり、夫婦がそれぞれ2分の1ずつの実質的な持ち分を有しているとされています。

    これは、夫の収入で持ち家を購入しても、その得られた収入は妻の内助の功があったからこそとの考えに基づくものです。

    そのため、妻が家の購入時に頭金やローンを払っていない場合でも、財産分与で妻が権利を取得することに問題ありません

    また、家の購入時に支払った頭金が、夫の独身時代の貯金であれば、その分は夫婦間の財産分与の割合を決定する際に考慮されますが、婚姻期間中に貯金したものであれば、持ち分は2分の1ずつとなります。

    ローンが共同名義の場合

    ローンが共同名義の場合、家の権利も共有になっているのが一般的でしょう。

    夫婦それぞれ購入資金の融資を受けているので、持ち家の名義も共同名義にしないと贈与税がかかる可能性があるからです。

    このとき、夫婦のどちらか一方が家に引き続き住む場合、家を出る側の権利を、財産分与によって移転させます。

    例えば、夫が引き続き持ち家に住む場合は、妻名義の持ち分を夫に移すことになります。

    しかし、ローンが共同名義となっているので、夫婦ともに支払い義務が継続しています。

    そこで、妻には同時にローンの名義も外してもらう必要があります。

    このようなときは、持ち家に引き続き住む夫がローンの単独名義で借り換えを行う、妻をローンの名義から外すなどの方法があります。

    後者の場合は夫婦間の合意だけでなく、ローンを取り扱っている金融機関の承諾も必要です。

    共同名義から単独名義への変更は難しい

    通常、どちらか一方がローン名義から脱退することは金融機関にとってデメリットなので、承諾を得ることは簡単ではありません

    代わりの連帯債務者を立てて金融機関と交渉すれば、承諾してくれる可能性がありますが、一般的に難しいでしょう。

    もし金融機関から債務者変更の承諾が得られなかった場合は、名義はそのままで夫が支払うことになりますが、妻にも支払い義務がある状態です。

    そのため、夫がローンを支払えなくなった場合、妻に請求が行ってしまうことも起こりえます。

    対策方法として、妻がローンの支払いをしなければならなくなった場合、その分を夫に請求できる旨の条項を離婚協議書に入れておくことが考えられます。

    ローンが夫婦どちらか一方の名義の場合、名義変更が不要な場合もありますが、共同名義の場合は名義変更の問題が起こります

    不動産名義とローン名義が異なる場合

    「不動産の名義」と「ローンの名義」が異なる場合に財産分与をすると、名義が同じ場合よりも不安定な状況に置かれてしまいます。

    不動産の名義とローンの名義が異なる場合の例

    「不動産の名義」夫A

    「ローンの名義」夫Aが経営するC会社

    「財産分与で移転させる不動産の権利」妻Bの場合

    妻Bは所有不動産でC会社の借金を担保する状態となる。

    もし、C会社の経営状態が悪くなりローンが支払えなくなった場合、「C会社の債権者」から強制執行による競売にかけられ、妻Bは財産分与で取得した不動産を失ってしまいます。

    妻Bは、夫Aと離婚した後では、婚姻当時のようにC会社の経営状態を把握することは難しくなるため、「不動産の名義」と「ローンの名義」が異なる不動産を所有することは、あまり好ましくありません。

    やむを得ず、このような方法で財産分与しなければならない場合、リスクを把握しておかなければならないでしょう。

    財産分与と贈与税の関係について理解しよう

    財産分与を行うとさまざまな税金がかかってきます。誰にどのような税金がかかってくるのかご紹介します。

    ローン残債がある家を財産分与すると、税金はかかるの?

    ローン残債がある家を財産分与する場合、家の時価から残債を引いた価格が、財産分与の対象となります。

    ローン残債額によりますが、家の時価の方が大きく、数千万円単位になる場合、課税金額が大きくなるため、気になるところ。

    財産分与で、家を取得する人にかかる税金で考えられるのが「贈与税」です。

    財産分与に伴って家の権利を受ける場合、相手に対し対価を支払うわけではないため、税務署から贈与と判断されるのではないかと考えられるからです。

    しかし、財産分与で家の権利を受ける場合、相手側から無償で譲り受けるわけではなく、「財産分与請求権」に基づき、権利を受けるものと考えられています。

    「贈与」で家の権利を受けることにはならないため、基本、財産分与で家の権利を受けた人に対して、贈与税はかかりません

    例外として、財産分与で家の権利を受けた場合、贈与と見なされ贈与税がかかることがあります。

    具体的には、下記が当てはまります。

    贈与税がかかるケース

    • 財産分与で取得した家の価格が、婚姻中に夫婦が協力して得た財産の額やその他の全ての事情を考慮しても多すぎると判断された場合(多すぎる部分の価格に対して贈与税がかかる。)

    • 離婚の目的が、相続税や贈与税を免れるためと判断されたとき(財産分与によって取得した全ての財産が贈与と見なされて、贈与税がかかる。)

    ローンの残債がある家は、財産分与の前に売却をするべきなの?

    財産分与で家を処理する場合の方法として、下記のような方法もあります。

    • 夫婦どちらかが権利を受ける方法
    • 第三者に家を売却して、売却代金を二人で精算する方法

    ローン残債がある場合、家の権利の他に、ローンの名義や支払いをどうするか考える必要があります。

    そのため、ローン残債のある家が財産分与の対象となる際、売却した方が適切に処理できる場合があります。

    そこで、財産分与の前に売却するべきなのか、家の価格とローン残債額のどちらが多いかで判断します。

    まずは、家の価格は今いくらなのか?調べないとはじまりません。「不動産一括査定サイト」を活用すれば、無料で家の査定ができます。

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    アンダーローンの場合

    まず、家の価格の方がローン残債よりも多い「アンダーローン」の場合は、財産分与の前に売却した方がいいでしょう。

    売却で得た代金の一部をローン残債の支払いに当てて完済すれば、ローン名義の問題を解決できます。

    後は、残りの代金を財産分与として二人で分けるだけのため、簡単に処理することが可能となります。

    オーバーローンの場合

    これに対し、家の価格よりもローン残債の方が多い「オーバーローン」の場合、財産分与の前に、家の売却自体が難しくなりま。

    家の売却には、基本的に設定されている抵当権などの担保を外すため、ローン残債を完済する必要があります。売却額よりも、ローン残債の方が多い場合、他から資金が用意できなければ実現できません。

    この点、任意売却を利用する方法も考えられますが、ローン債権者である担保権者の同意を得なければならないので、そう簡単にはできないでしょう。

    そこで、オーバーローンの場合、売却ではなく、家を残す方法で処理する方がよいかもしれません。

    家とローンの名義はそのままの状態でローンを支払い続け、完済後、家の名義を財産分与で権利を取得する人へ移せば、スムーズに手続きできるからです。

    ローンの残債 どうすべきか
    アンダーローンの場合
    (家の価格>ローン残債)
    財産分与の前に売却した方がいい
    オーバーローンの場合
    (家の価格<ローン残債)
    家を残す方法で処理していく方がいい

    離婚の財産分与で得た住宅にも、ローン控除は適用されるの?

    ここからは、財産分与で住宅を得た場合、「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」の適用を受けることができるのか、解説します。

    住宅の名義が「単独」の場合と、「共有」の場合に分けて考える必要があります。

    単独の名義の場合

    名義が単独の場合は、財産分与で住宅を取得した人がローン控除を受けられるかがポイントです。

    ローン控除の対象となる住宅を取得する場合、贈与が取得原因で相手が取得するとき、および取得後に生計を一つにする親族などである場合は、適用外と租税特別措置法で定められています。

    しかし、財産分与は贈与ではなく、離婚した元配偶者も生計を一つにする親族などではないので、ローン控除の要件を満たせば適用されます。

    共同名義の場合

    夫婦が共同名義ローンを組み住宅を購入した後に離婚し、財産分与で夫が妻の持ち分を取得したケースについて解説します。

    この場合は「持ち分取得による借入残高を有している」など、ローン控除の要件を満たしていれば、「購入時の夫の持ち分」と「財産分与で取得した妻の持ち分」それぞれ適用を受けることが可能です

    参考:離婚による財産分与で居住用家屋の共有持分を追加取得した場合の住宅借入金等特別控除について(国税庁)

    【不倫による離婚の場合】ローン残債のある不動産の財産分与はどうなる?

    不倫による離婚の場合、財産分与やローンの支払いはどうなるのかをご紹介します。

    相手の不倫が原因の場合、ローンは払わなくても良いの?

    不倫が原因で離婚する場合、有責配偶者が相手方に対して慰謝料を支払います。

    分与対象となる財産にローンの残債のある不動産が含まれる場合、ローンの負担を慰謝料の支払いに充てるケースが多いです。

    【例】ローンの負担を慰謝料の支払いに充てるケース

    夫の不倫が原因の離婚の場合で、妻が財産分与でローン残債のある不動産を取得し、夫がローンを負担するというケース。

    慰謝料がローン全額に相当する場合、基本的に不倫された側の妻にローンを支払う義務はありません。しかし、ローン全額の一部の場合、妻が残りを支払うことになります。

    また、慰謝料がローン全額に相当し、全ての支払い義務が夫にある場合でも、何らかの理由で夫が支払い不可能となり、住宅ローンの滞納が続くと債権者から競売にかけられて、妻は不動産を失ってしまいます。

    そのため、妻に支払い義務がなくても、支払わざるをえない場合も出てきます。

    関連記事:競売とはどんなもの?競売の流れと任意売却のメリット3つ

    不倫の場合は、調停と裁判のどちらで財産分与について決めるべき?

    不倫が原因で離婚する場合、不倫された側は冷静でいられないことが多いでしょう。

    このようなときは、当事者だけで話し合い、財産分与について決めるの難しいため、「調停」または「裁判」で決めます

    調停とは民間人から選任された調停委員が間に入り、お互いの言い分を聞いて妥協点を探りながら財産分与について決めていく手続きです。

    これに対して裁判は当事者から出された資料をもとに裁判所が判断を下し、財産分与について決めていく手続きをいいます。

    財産分与の決め方 詳細
    調停 民間人から選任された調停委員が間に入り、お互いの言い分を聞いて妥協点を探りながら財産分与について決めていく手続き
    裁判 当事者から出された資料をもとに裁判所が判断を下し、財産分与について決めていく手続き

    「調停」か「裁判」。どちらで財産分与について決めるかは、当事者同士が話し合える余地があるかで判断すべきでしょう。

    当事者同士では感情的になってしまうが、誰かが介入すれば話し合いの余地がある場合は、調停を利用した方がよいでしょう。

    これに対し、完全に関係が冷え切って話し合いができない状態の場合は、裁判を利用するしかありません。

    • 法律的には婚姻中に夫婦が築いた財産は夫婦の共有財産となり、夫婦がそれぞれ2分の1ずつの実質的な持ち分を有する
    • 財産分与によって家の権利を受ける場合、財産分与請求権に基づき相手側から権利を受けるものと考えられているため、基本的に贈与税はかからない
    • 調停か裁判のどちらで財産分与を決めていくかは、当事者同士が話し合える余地があるか?で判断すべき

    ローン残債がある家を財産分与する場合、まずは家の価値がローンの残債よりも上回るのか、下回るのかを把握しましょう。

    まずは、今の家はいくらなのか「不動産一括査定サイト」で価値を調べてみましょう。

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