離婚における不動産売却

2020-12-08

離婚時の不動産財産分与はどうする?査定方法や必要書類・税金も解説

財産分与の対象となる財産の中でも手続きをするのに大変だと思われるのが自宅などの不動産です。

財産分与をする場合、それぞれの財産の評価額を出す必要がありますが、不動産は他の財産よりも評価額が大きいので慎重に行わなければなりません。

手続き方法の選択を誤ると費用が余計にかかってしまうこともあります。そこで不動産の財産分与をいかに費用と手間をかけずに行うかを評価額・財産分与の方法・税金面から見ていきます。

目次

    離婚したら不動産の財産分与はどうやって行う?

    離婚時の財産分与に必要な書類や方法をご紹介します。

    不動産は評価額から計算して財産分与するのか?

    財産分与をする場合、夫婦の分与割合に基づいて財産を分けていくことになるので、対象財産の額を算出しなければなりません。

    不動産の評価額を出す場合、基本的に固定資産評価額によって算出します。

    固定資産評価額とは不動産を所有することでかかる固定資産税を計算するための基準となる価格のことです。

    固定資産評価額はおおむね公示地価の7割程度の価格で定められ、不動産の評価額を算出する一つの基準となっています。

    財産分与は基本夫婦で半分ずつ

    不動産の財産分与は、原則は夫婦半分ずつの割合です。

    一般的に夫が外で仕事をして収入を得ている場合、妻よりも財産形成の貢献度が高いと思われますが、妻が内助の功によって夫を支えているからこそ、仕事に専念でき収入が得られるのです。

    そのようなことから財産形成に対する貢献度は同等という評価がされます。

    ただ、財産形成が夫婦どちらか一方の特殊な能力によるものや、夫婦どちらか一方の財産形成に対する貢献度が低い場合は例外として、財産分与の割合が夫婦半分ずつにならない場合もあります。

    不動産の財産分与時に必要な書類のまとめ

    不動産を財産分与する場合、分与を受ける側の名義にするため登記手続きをします。

    その際、必要な書類がいくつかあり、分与する側と分与を受ける側でそれぞれ違います。

    また、財産分与のきっかけとなる離婚には、夫婦間で話し合い離婚に合意する「協議離婚」と、夫婦どちらか一方が離婚に応じない場合に裁判所を通じて離婚の訴えを起こす裁判上の離婚があります。 不動産の財産分与で登記手続きをする場合、それぞれ必要となる書類が異なります。

    まず、協議離婚の場合で不動産を財産分与するとき、分与する側は、対象不動産の権利証、発行から3ヶ月以内の印鑑証明書、固定資産評価証明書が必要となります。

    協議離婚の場合で不動産を財産分与するとき

    • 対象不動産の権利証
    • 印鑑証明書
    • 固定資産評価証明書

    また、登記されている住所や氏名が現在の住所や氏名と違う場合、住所や氏名の変更登記をしなければならないので、住民票や戸籍謄本の用意も必要です。

    また戸籍謄本は財産分与をする前提となる離婚がなされているかを確認するためにも必要となります。

    一方、分与を受ける側は手続きをするために住民票が必要です。

    次に裁判上の離婚の場合、不動産の財産分与をする側は、固定資産評価証明書が必要です。分与を受ける側の必要書類は住民票のみです。その他離婚の裁判が確定した判決書が必要となります。

    不動産の価格はどのように知るのか?

    不動産の財産分与をする場合、まず不動産の価格を算出しなければなりません。

    夫婦が有している分与割合に沿って公正な分与をするためには、不動産の価格を正確に把握しなければならないからです。

    不動産の価格を知るには、主に固定資産評価額を利用する方法とを利用する方法や、を利用する方法があります。

    不動産の価格を知る方法

    • 固定資産評価額を利用する
    • 不動産業者の無料査定を利用する
    • 土地総合情報システムを利用する

    固定資産評価額は、不動産の所有者に対し毎年送付される「固定資産納税通知書」に記載されています。

    また、市区町村役場の資産税課など税金関係書類を取り扱う部署で「固定資産評価証明書」を取得して知ることも可能です。

    不動産業者の無料査定がおすすめ

    不動産業者が無料査定で提示する査定書とは、対象不動産の築年数、所在地、面積、構造、取引事例などからどのくらいの価格で売却できるのかを不動産業者が査定した結果が記載した書類のことです。

    不動産業者に不動産の無料査定の申し込みをすると査定書を送ってくれるので、それに必要事項を記入して不動産業者に返送すると対象不動産の価格を査定してくれます。

    そのため、手間を極力軽減して不動産の価格を知りたい場合、固定資産評価額よりも不動産業者の無料査定を利用した方がよいでしょう。

    また固定資産評価額は3年に一度しか評価を行わず、急騰や急落を反映しづらいため、不動産業者の無料査定を利用した方が正確な不動産価格を知ることができるというメリットもあります。

    離婚時に不動産の財産分与をするなら売却してからの方がよい?

    不動産を財産分与をする方法は、不動産を残す方法と他の人に不動産を売却して得られた現金を分ける方法があります。

    財産分与の方法

    • 不動産を残す
    • 売却して得られた現金を分ける

    どちらの方法にもメリットとデメリットがあります。状況に応じて、適切な方法を選択することが大切だといえるでしょう。

    まず、財産分与のしやすさという点から見ると、不動産を残すよりも売却した方がいいでしょう。

    不動産を残す場合、夫婦の分与の割合に沿った形で分けるので、不動産の価格を調査する手間がかかります。

    また不動産の価格を知ることができたとしても、他の保有財産との兼ね合い上、分与しにくい状況が出てきてしまうことも少なくありません。

    これに対して不動産を売却してから財産分与をする場合、売却代金を分けるという形で行うので分与しやすいのです

    不動産の売却の過程では仲介不動産業者が適正な売却価格を調査するため、当事者が自ら不動産の価格を調査することは不要で手間がかからないのもメリットです。

    財産分与によって得られる金額の大きさを重視するなら残す方がよい?

    手続きの迅速性や分与によって得られる金額の大きさという点から見ると一概に売却した方がよいとはいえません。

    財産分与の対象となる不動産の売却を仲介不動産業者に依頼してからすぐに売却できるとは限らないからです。

    仲介不動産業者は手続きを依頼された後、買主となる人を探すのですが、場合によっては数ヶ月後になってしまう場合もあります。

    また不動産の状態や居住者の事情によっては売却できるかどうかもわかりません。

    さらに、仲介不動産業者に売却をお願いする場合、仲介手数料を支払わなければなりません。

    仲介手数料の支払いは基本的に不動産の売却代金から出すので、夫婦それぞれが受けられる財産分与額が少なくなってしまいます。

    手続きの迅速性や分与によって得られる金額の大きさという点では、不動産を残す方が適切である場合も多いのです。

    また、不動産を売却してから財産分与をする場合、ローン残債があるときはそれを完済しなければならないことや引っ越しをしなければいけないなどの問題点もあります。

    不動産の財産分与をするなら売却してからの方がよいか否かはケースバイケースだというのが結論です。

    ケースで異なる不動産の財産分与方法

    ローン残債額の程度や名義人が自分なのか、相手なのかでも分与の方法は変わってきます。

    【ケース別】財産分与の方法

    • オーバーローンのとき
    • 単独名義のとき

    ローンの残債が「オーバーローン」の場合の財産分与方法

    自宅など不動産を購入する場合、住宅ローンを利用するのが一般的です。

    よほどの資産家でないかぎり、数百万円から数千万円単位のお金をまとめて出すことはできないからです。

    そのようなことから離婚する夫婦が不動産の財産分与をするとき、ローン残債がある場合が少なくありません。

    そこでローン残債がある不動産を財産分与する場合、不動産の価格とローン残債額の大きさについて考慮しなければなりません。

    なぜならどちらの額が大きいかによって、財産分与の手続き方法が変わってくるからです。

    ローン残債額よりも不動産の価格が高いアンダーローンの場合は比較的簡単です。

    不動産を売却した代金でローン残債を完済してもまだ手元に現金が残るので、それを夫婦間で分与すればいいからです。

    オーバーローンの場合

    これに対し、不動産の価格よりもローン残債額が高いオーバーローンの場合は少し厄介です。

    不動産の売却代金だけではローン残債を完済できないので、ローンが残ってしまうからです。

    このような場合、財産分与の問題ではなく、ローンに対する責任の問題となります。

    具体的にはローンの名義人やその保証人になった人は、ローンの支払い義務を負わなければならないということです。

    夫婦間で協議して支払い方法を決める必要があり、もし支払いが難しい場合は破産を検討しなければならないこともあります。

    またローン残債を完済できないとき、ローン債権者の合意を得て売却する任意売却の方法で処理することも考えられるでしょう。

    ただこの場合もローンがなくなるわけではないため、支払い方法を考える必要があることに変わりありません。

    オーバーローンの場合は不動産を残すほうがよい?

    オーバーローンとなっている場合、不動産を残す選択肢もあります。

    この場合、ローンの名義人や保証人に変化は生じないので、今までどおりローンを支払っていくことになります。

    ただ、夫婦のうち自宅から出ていく方がローン名義人になっている場合、これまでと同じようにローンを支払っていくのは納得できない部分があります。

    そのためローン名義人の変更をローン債権者である金融機関と交渉していくことになるでしょう。

    もしローン名義人の変更を認めてくれない場合は、ローン名義はそのままの状態で、引き続き自宅に住む側がローンの支払いをすべて負担するという方法を取ることもあります。

    不動産名義が個人名義か共有名義でも財産分与の方法は異なる

    夫婦が自宅を購入する際、金銭を出資した割合に応じて名義人となります。

    例えば夫が購入資金をすべて負担した場合は、夫の個人名義にするのに対し、夫婦が共同して購入資金を負担した場合は、夫婦共有名義にします。

    そのため離婚時、財産分与の対象となる自宅の名義が個人名義の場合もあれば共有名義の場合もあるということです。

    そこで個人名義か共有名義かで財産分与の方法が異なるのかということになるのですが、個人名義の場合は必ずしも名義変更しなくてもいいのに対し、共有名義の場合は名義変更する必要が生じるという違いがあります。

    自宅の名義変更自体は原則夫婦間で協力して行えばよいのですが、ローン残債がある場合、一般的にローン債権者の承諾を得なければならないとローン契約書の条項に定められているので、ローン債権者の承諾が必要になるでしょう。

    また自宅の名義を変更したからといって、ローン名義人が変更になるわけではありません。

    例えば自宅が夫名義でローン名義人も夫である場合、妻への財産分与によって自宅の名義変更をしても夫はローン債務を免れないということです。

    ローン債務を免れるためには、ローン名義人を変更しなければなりませんが、その際に銀行などローン債権者の承諾が必要となります。

    一般的には承諾しないケースが多いので、ローン名義人の変更は難しいのが現状です。

    また自宅の名義が個人名義であっても共有名義であっても、婚姻してから夫婦が共同で築いてきた財産であれば原則財産分与の対象となり、分与の割合は夫婦それぞれ半分ずつになります。

    たとえ夫の個人名義で妻は自宅を購入するための頭金を支払っていない場合であっても、夫4分の3、妻4分の1の共有名義であっても夫婦半分ずつで財産分与をします。

    ただ自宅の購入資金を夫が独身時代から築き上げてきた財産で賄っている場合は例外として財産分与の対象とはなりません。

    離婚時に財産分与をすると支払い義務が生じる税金とは?

    分与した側とされる側では、負担する税金が異なります。分与の対象となる財産が土地や建物などの不動産である場合、財産分与した側に譲渡所得税がかかってきます。

    ここでは、税金の負担の違いについて紹介していきます。

    財産分与した側とされる側のかかる税金の違いとは?

    分与の対象となる財産が土地や建物などの不動産である場合、財産分与した側に譲渡所得税がかかってきます。

    財産分与をすることで、相手に対して分与する義務を消滅させたという利益を受けていると考えられるためです。

    これに対して財産分与される側は登記手続きをする際に登録免許税がかかるだけで贈与税や不動産取得税は原則かかりません

    財産分与は贈与ではなく夫婦財産の清算であり、一般の不動産取得とは趣旨が違うからです。

    ただ分与財産の額が婚姻中に夫婦が協力して築き上げた財産の額その他いっさいの事情を考慮してもなお多すぎる場合、分与財産の額のうち多すぎる部分に贈与税がかかります。

    また相続税や贈与税を免れるために離婚による財産分与をした場合、その全額に対して贈与税がかかってきます。

    譲渡所得税をかけずに不動産の財産分与をする方法とは?

    不動産を財産分与した側に譲渡所得税がかかりますが、これは不動産を購入したときよりも分与するときの時価が高い場合のみです。

    そのため、不動産を購入したときの時価の方が分与したときの時価よりも高い場合、譲渡所得税はかかりません。また譲渡所得税がかかる場合でも、免除や軽減を受ける方法があります

    具体的には先に離婚をして、その後不動産を譲渡することで、居住用不動産売却の3000万円特別控除や軽減税率の特例を受けるというものです。

    ただこれらの優遇措置は夫婦間では適用されません。そのため不動産を財産分与する前に、離婚をして夫婦の関係を解消させておくとよいでしょう。

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