不動産売却の費用一覧!仲介手数料は値引き可能?税金の注意点や具体例も紹介
「不動産売却にかかる費用って、仲介手数料くらいじゃないの?」と考える人が多いようです。
確かに不動産を売却する場合、通常は不動産会社に買主探しを依頼することになりますので、仲介手数料が発生します。
しかし、仲介手数料のほかにも、不動産売却にかかる費用はいくつかあります。また、売却する不動産の特徴や住宅ローン返済の有無、引っ越しの有無などによっても費用は変わってくるのです。
まずは不動産売却にかかるさまざまな費用についてチェックして、複数の不動産会社に売却方法や想定される費用について意見を聞いてみるとよいでしょう。
目次
不動産売却にかかる費用
不動産売却にかかる費用には、主に以下の3種類があります。これから詳しく解説していきます。
(1)不動産売却で必ずかかる費用
仲介手数料 | 売買価格×3%+6.6万円 |
印紙税 | 売買価格による。賃貸物件などは領収証にも添付が必要 |
(2)必要に応じてかかる費用
登録免許税 |
|
期前返済手数料 | ローンを期日前返済する場合の手数料。金融機関規定による |
建物解体費用 | 建物構造および規模、道路状況による |
境界確定費用 | 隣接土地の件数や規模等による |
(3)不動産の価値を上げる費用
(1)インスペクション費用 | 建物状況調査費用(種類・規模・調査範囲で費用は変わる) マンションの場合、30,000円~50,000円程度 一戸建ての場合、50,000円~150,000円程度 |
(2)バリューアップ費用 | クリーニング費、修繕・改修費、ホームステージング費など |
(1)不動産売却で必ずかかる費用
まずは、不動産売却において、絶対に払わなければいけない費用を二種類紹介します。
一つは、不動産売買の仲介をする不動産会社に支払う「仲介手数料」。
もう一つは、印紙税法に基づき、契約書類などを作成する際に課せられる税金の「印紙税」です。
■仲介手数料
仲介手数料は、宅地建物取引業法等により、その上限額(消費税込み)が以下の通り規定されています。
200万円以下の金額 | 100分の5.5 |
200万円を超え400万円以下の金額 | 100分の4.4 |
400万円を超える金額 | 100分の3.3 |
例えば3000万円で不動産売却が成立した場合、仲介手数料は以下の通り、1,056,000円(消費税込み)となります。
200万円以下の金額 | 200万円×5.5%=110,000円 |
200万円を超え400万円以下の金額 | 200万円×4.4%=88,000円 |
400万円を超える金額 | 2,600万円×3.3%=858,000円 |
合計 | 合計1,056,000円 |
一般に、仲介手数料の計算式が「3%+6万円」と言われているのは、上記表で示した上限額の速算式です。
重要なのは、ここで規定されている仲介手数料は上限額であり、これより安くする分には特に問題はないということです。
■印紙税
不動産を売却した場合、原則として不動産売買契約書の原本2通を作成し、売主と買主でそれぞれ1通を保管します。
このとき、不動産売買契約書には収入印紙を添付しなければなりません。収入印紙を購入するためにかかるのが印紙税です。印紙税は以下の通り規定されています。
契約金額 | 軽減税率(不動産売買契約は軽減の対象) |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下のもの | 200円 |
10万円を超え、50万円以下のもの | 200円 |
50万円を超え、100万円以下のもの | 500円 |
100万円を超え、500万円以下のもの | 1,000円 |
500万円を超え、1000万円以下のもの | 5,000円 |
1000万円を超え、5000万円以下のもの | 10,000円 |
5000万円を超え、1億円以下のもの | 30,000円 |
1億円を超え、5億円以下のもの | 60,000円 |
5億円を超え、10億円以下のもの | 160,000円 |
以下省略 | 以下省略 |
(2)必要に応じてかかる費用
不動産や売主の状況によっては、建物の解体費用やローン一括返済の手数料などの費用がかかる場合もあります。
自分の物件には何が必要なのか、事前によく確認しておきましょう。
■登録免許税
住宅ローンなどの借入金の担保となっている不動産を売却する際、その不動産に設定された抵当権等を抹消する必要があります。
不動産売買契約上、抵当権等をすべて取り除く義務が売主にはありますので、まずは抵当権の目的となった住宅ローンなどの借入金の全額を返済し、金融機関から抵当権抹消に関する書類を入手し、法務局にて抵当権等抹消手続きを行わなければなりません。
これにかかるのが「登録免許税」です。
登録免許税は一筆で1,000円、土地一筆、建物一筆の場合、合計2,000円の印紙代が必要です。
ここまでが自分で行った場合の金額です。自分で抵当権抹消手続きを行うことも可能ですが、一般には司法書士に委託します。その場合には司法書士報酬(1万~2万円程度)がかかります。
■期前返済手数料
住宅ローンの残債が残っている場合、一括で返済しないと不動産を売却することはできません。
一括で返済する場合、住宅ローンの種類や金融機関によって手数料(期前返済手数料)を支払わなければならないケースがあります。
ネット系金融機関の中には手数料を無料で受けてくれるところもありますが、33,000円程度の手数料がかかるところが多いようです。
中には5万円を超える金融機関もあります。
まずは事前に住宅ローンを借りている金融機関に確認しておくとよいでしょう。
■建物解体費
維持管理をあまり行わず、老朽化が進んでしまった建物付きの土地を売る場合、建物を解体した上で売却した方がよい場合があります。
その際は建物解体費がかかります。
建物解体費は廃棄物処理費用も含めて、下記の金額が相場となります。
- 木造の場合:1坪あたり3万~5万円程度
- 鉄骨造の場合:1坪あたり4万~8万円程度
- 鉄筋コンクリート造の場合:1坪あたり6万~10万円程度
ただし、大型重機が入ることができないような道路に面していたり、道路は広くても敷地内に入るためのスペースが狭かったり、道路との高低差がかなりあるなどの場合や、地下室がある場合、アスベストが使用されている場合などは、建物解体費がさらにアップします。
建物解体時に注意したいのは、隣地との境界点を示す境界標(境界杭、境界プレート、鋲など)が破損してしまうことがあることです。
解体工事を行うにあたって境界標ごと解体せざるを得ない場合があり、その場合は境界標を復元(あらたな境界標を設置)する必要がありますので注意が必要です。
境界標は種類によって費用が異なりますが、隣地所有者との関係もありますので、以前にあった境界標と同等のものを設置することになります。
境界標の設置費用は以下の金額がかかります。
- コンクリート杭の場合:十数万円程度
- 金属プレートの場合:数万円
■境界確定費用
土地や土地付き一戸建てを売却する場合、隣地との境界線と境界点を明確にしなければなりません。
一般的な不動産売買契約には、
「売主は、買主に対し、表記残代金支払日までに、土地につき現地にて境界標を指示して境界を明示します。なお、境界標がないとき、売主は、買主に対し、その責任と負担において、新たに境界標を設置して境界を明示します。ただし、道路(私道を含みます。)部分と土地との境界については、境界標の設置を省略することができます。」
といった条項が記載されています。
境界標がない場合、新たに境界標を設置することになります。
その場合は土地家屋調査士による測量図の作成、境界標の設置とともに、隣地所有者との現地での立ち会い、隣地所有者に対する境界確認書への記名押印の依頼といった作業が必要になる場合があります。
境界確定費用は、新たに設置する境界標の数や隣地所有者の数によって異なりますが、一般的な一戸建ての場合、20万~50万円程度かかるのが一般的です。
(3)不動産の価値を上げる費用
他、物件の状態を明確にするために調査をしたり、より高く販売するために補修などを行ったりするケースもあります。
売却戦略によって変わりますが、主な費用は以下の通りです。
■インスペクション(建物状況調査)費用
インスペクション(建物状況調査)とは
国の登録を受けた既存住宅状況調査技術者が、建物の基礎、外壁等に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化事象・不具合事象の状況を目視、計測等により調査するものです。
参考:国土交通省 インスペクションについて不動産業者はインスペクションについて以下のことを行わなければなりません。
- 媒介契約締結時に中古住宅の売主や買主に対して、インスペクションをする業者のあっせん可否を事前に示す
- 消費者に対し「調査」をするかしないかの意思確認を行う
インスペクションは売主が負わなければならない「契約不適合責任」のリスクを少なくすることにもつながります。
契約不適合責任とは、売買の目的となる土地や建物に土壌汚染や地中埋設物などが発見された場合や、建物に欠陥や不具合が見つかった場合など、契約の目的物である土地建物が品質などに関して契約の内容に適合しないものであるときに、売主が責任を負わなければならないという民法上の規定です。
契約前に中古住宅でわかっている欠陥や不具合を買主に説明しておけば、その部分については契約不適合責任の範囲から外れることになります。
買主はそうした欠陥や不具合があることをわかった上で、価格交渉をするなどして購入することになりますので、売主がこの部分について責任を負う必要はなくなるわけです。
もちろん、事前の調査で問題点が見つかれば、契約前に修繕しておくという手もあります。
インスペクションの結果を開示して売却すれば、買主も建物の状態を理解した上で購入できますので、インスペクションしていない中古住宅との差別化になる場合があるとされています。
インスペクション費用は、取り扱い会社や建物規模によって異なりますが、下記の金額が相場となっています。
- マンションの場合:4万~5万円程度
- 戸建て住宅:5万~10万円程度
なお、インスペクションの結果、劣化や不具合等がないなど一定の条件を満たせば、「既存住宅売買瑕疵保険」に加入できます。
中古住宅を買った後に、目視ではわからなかった箇所などに問題が見つかっても、既存住宅売買瑕疵保険でカバーされた範囲については修繕費用が支払われます。
これならばより安心できる不動産として買主に認識されるでしょう。
■その他バリューアップ費用
古い戸建て住宅やマンションを売る場合、他の競合する物件に比べて見栄えが悪く、思うように売れないということがあります。
価格を下げれば売れるというのは事実ですが、バリューアップ(=価値を上げる)費用のほうが値下げよりも少なく、かつ価格を下げずに売れるというのであれば、バリューアップ費用を投下する価値はあると判断できます。
バリューアップ費用には、先に述べたインスペクションも含まれますが、ほかにクリーニング費用、部分的な修繕・改修費、ホームステージング費用などがあります。
空室のクリーニングでしたら、1平方メートルあたり1,500円程度で実施できます。
住まいのまま売却活動を行う場合でも、部分的にクリーニングを行うことが可能で、キッチンの油汚れやバスルームの水あかなど、思った以上にきれいになります。
部分的修繕・改修費とは、例えば、壁紙が汚れているような場合、リビングダイニングだけ部分的に張り替えてみるというものです。
他のお部屋との差は歴然となりますが、壁紙張り替えだけで見違えるということを買主に訴求できる点が大きいと言われています。
仲介手数料の値引きは可能か?

仲介手数料は、一般に「3%+6万円」と言われていますが、これはあくまで上限額であることは先に述べた通りです。
場合によっては、仲介手数料が最も低い不動産会社を選ぶ方法もあります。
実際に、人気エリアの築浅物件を売りたいというケースでは、仲介手数料が大幅に低くなることもしばしば見受けられます。
なぜ仲介手数料が値引きされるかというと、だれでも比較的容易に売れる物件であるがゆえに、不動産会社にとっては競争が激しくなるからです。
一方、必ずしも人気エリアにはない築古物件である場合、なかなか仲介手数料の値引きは難しくなるかもしれません。
このような場合、仲介手数料の値引きより、他の競合する物件よりもよく見せる工夫、差別化できる工夫ができる不動産会社を選びましょう。
同じ仲介手数料を支払うのであれば、少しでも高く売れるノウハウを持っている不動産会社に買主探しを依頼する方が、最終的な売却額がアップする可能性があります。
ひとつ注意しておきたいのは、不動産業者は不動産を独占的に売らせてもらいたいと考えているので、査定額を相場よりも高くしがちになるということです。
不動産は相場の範囲内でしか売れません。相場の範囲はどの程度なのか、まずは一括査定サイトなどを通じて、いくつかの不動産業者を選びましょう。
そして不動産会社から、実際の取引事例や競合する物件などについて説明してもらい、自分なりに相場を理解していきましょう。
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不動産売却後の税金にも注意しよう

不動産を売却して譲渡所得が発生した場合、所得税や住民税を支払う必要があります。
譲渡所得の概算は、売却価格を含む譲渡収入金額(※1)から取得費(※2)と譲渡費用(仲介手数料などの費用)、一定の条件のもとで利用できる特別控除(※3)がある場合はこれを差し引いたものになります。
この譲渡所得に税率を乗じたものが税金となります。
売却にかかった費用は譲渡収入金額から差し引けますので、領収書はきちんと保存し確定申告の際に使いましょう。
なお、住まいを買い換える場合、マイホームを売った場合の3000万円控除と住宅ローン控除は併用できません。どちらを使った方がお得か、税理士などの専門家に確認しておくことをおすすめします。

(※1)譲渡収入金額
土地建物の売却代金、固定資産税・都市計画税精算金
(※2)取得費
「土地建物の購入価格と購入時にかかった費用の合計から建物の減価償却費(物件の購入時から売却時までの劣化分を金額に換算したもの)を差し引いた額」と「譲渡収入金額の5%相当額」のうち、高い方が取得費となる。購入価格が不明である場合は後者を用いる
(※3)特別控除
マイホームを売った場合で一定の条件のもと、3000万円の特別控除が受けられる。このほか、親から相続した空き家を売却した場合の3000万円控除などがある
所有期間 (譲渡した年の1月1日現在において、所有期間が5年以下か5年超か) |
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期間 | 5年以下(短期譲渡) | 5年超(長期譲渡) |
税率 | 39.63% (所得税30.63% 住民税9%) |
20.315% (所得税15.315% 住民税5%) |
居住用で10年超所有の場合は軽減税率の適用が別途ある
不動産売却の具体事例と実際にかかった費用

以下は、筆者がかかわった具体事例です。ここまでの説明に加え、以下の具体的事例とを合わせて、自分の不動産売却にかかる費用をイメージしてみてください。
種別 | 築浅中古マンション |
物件概要 | 東京都23区内(私鉄沿線 某駅より徒歩3分) 専有面積:約72平方メートル 12階(最上階) 築4年 |
成約価格 | 7700万円 |
売却にかかった費用 | 仲介手数料:税込み127.05万円(成約価格の1.5%相当) 印紙代:3万円 抵当権抹消費用:20,350円 |
取引の特徴 |
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種別 | 中古戸建て |
物件概要 | 東京都23区内(私鉄沿線 某駅より徒歩5分) 土地面積 約80平方メートル 建物延面積 約 125㎡ 3階建 築22年 |
成約価格 | 8750万円 |
売却にかかった費用 | 仲介手数料:税込み240.625万円(成約価格の2.5%相当額) 印紙代:3万円 抵当権抹消費用:19,000円 住所変更登記費用:11,000円 部分修繕・部分改装費:約100万円 |
取引の特徴 |
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【まとめ】不動産会社選びとして「一括査定サイト」を活用しよう
不動産売却においては、ケースによってさまざまな費用がかかります。必ずかかる費用のうち仲介手数料は値引きしてもらえる可能性がありますが、所有している不動産のタイプ次第という側面があることを理解しましょう。
また、仲介手数料以外の費用(税金関係や期前返済手数料を除く)については、下記の条件をもとに、想定される買主がどんな人かということや、競合する物件などを踏まえて判断する必要があります。
- その費用をかける必要性が本当にあるのか
- その費用をかけることで売りやすくなるのか
- その費用をかけることで不動産の価値が上がるのか
そのためにも複数の不動産会社と話をしてみる必要があります。
まずは不動産会社選びの判断材料として、「一括査定サイト」を活用してみてはいかがでしょうか。
監修者
田中 歩(たなか あゆみ)
1級FP技能士、日本ホームインスペクターズ協会公認ホームインスペクター・理事
慶応義塾大学経済学部卒。三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)に17年間勤務後、あゆみリアルティ―サービスを起業。 事業用不動産、中古住宅、投資用不動産の売買仲介・活用・運営・相続コンサルティング、ファイナンスアドバイス等を中心にビジネス展開。日経電子版などにて、不動産関連コラムを連載中。 ■Webサイト あゆみリアルティ―サービス https://www.ayumi-ltd.com/