不動産の査定

2020-11-12

不動産売却の査定方法は2種類!査定基準や損しないためのポイント3つ

不動産を売却したいとき、まず何からすればいいの?

不動産を売るのは初めてという方は多いと思います。どんな手順で進めていけばいいのか、わかりにくいですよね。

しかし、まず行うべきことは決まっています。それが「査定」なのです。査定には「仲介査定」と「買取査定」があります

仲介査定とはエンドユーザー向けの査定であり、買取査定は不動産会社による買取価格となり、買取後の必要経費や利益額を見込んでの査定となるため、仲介査定より極端に低くなります。

急ぎで売却をしたい、瑕疵担保(不適合責任免責)を免責したい場合などは、「買取査定」を依頼することになりますが、今回は両者に共通する一般的な査定について、押さえておきたい基本やコツを解説していきます。

目次

    査定とは?2種類の査定方法とそのメリット・デメリット

    「査定」とは、売却を考えている不動産をさまざまな角度から調査して、「売却できそうな価格=査定価格」を不動産会社に出してもらうことです。

    ただし、査定価格はあくまで「売却できそうな」価格でしかありません。「査定価格=実際の不動産の売却価格」ではないことに注意しておきましょう。

    また、ひと口に査定といっても、「簡易査定」と「訪問査定」の2種類があります。

    それでは簡易査定と訪問査定の違いについて、詳しく見ていきましょう。

    簡易査定(机上査定):さまざまなデータをもとに机上で行う簡単な査定

    簡易査定では、立地・築年数・面積・近隣の類似物件の取引事例、路線価・公示価格といった不動産に関連するデータベースをもとに、机上で売却できそうな価格を見積もります。

    簡易査定のメリット

    なんといっても手軽さとスピードが簡易査定のメリットです。

    不動産会社に足を運ぶことなく、いつでもどこでも都合の良いときに電話・メールなどを通じて、気軽に依頼できます。査定の結果も、早ければ当日中にはわかる場合もあります。

    一括査定サイトを使えば、複数の不動産会社による簡易査定の結果が一括表示されるため、さらに便利です。また、一括査定サイトの利用が無料なのもメリットの1つです。

    おすすめの一括査定サイトについては「初めての方におすすめ!不動産売却の進め方&不動産会社の選び方」をご覧ください。

    簡易査定のデメリット

    「簡易」という言葉のとおり、おおよその査定価格しかわからないのがデメリットです。

    現地に足を運び、物件の詳細を確認して出された価格ではないため、実態とかけ離れた査定価格が出でくる可能性もあります。

    訪問査定(詳細査定):不動産会社の担当者が実際に物件を確認し行う査定

    訪問査定では、不動産会社の担当者が現地に足を運び、実際に物件の外観や内部を確認し行う査定です。

    訪問査定のメリット

    物件の状況をプロがその目で詳細に見て判断するため、精度の高い査定が受けられます。

    売却希望者の方の意向等をヒアリングし、周辺環境、道路と敷地の位置関係、建築基準法や関係法令、室内や設備の使用状況、日当たりや眺望など、その物件ごとの実態が査定価格に正確に反映されます。

    そのため訪問査定で出した査定価格をベースに、実際の売却希望価格を決定することが多いです。

    また、不動産会社によっては訪問査定を無料で行ってくれるところもあります。

    訪問査定のデメリット

    簡易査定と比べ、時間・日数がかかります。訪問査定はその査定に1時間程度、時間がかかる場合があり、役所調査なども必要になることから査定価格が出るまで数日かかるのが一般的です。

    また、訪問査定を有料にしている不動産会社もあるので、事前にチェックしておきたいところです。

    簡易査定と訪問査定、どっちがいいの?

    結論からいうと、簡易査定も訪問査定も両方行うべきです。

    先に説明した通り、実際の売却希望価格を決める際に採用すべきは訪問査定の結果です。

    しかし、訪問査定を依頼する前に簡易査定を経験しておくことで、物件の相場感がつかめ、訪問査定の結果が相場より高いのか安いのか、判断できるようになるのです。

    以下の順番で査定を行うのがよいでしょう。

    不動産の知識・価格の相場がわからない段階で、いきなり訪問査定を依頼すると、不動産会社によっては、不動産売買を仲介するための契約を依頼者と交わしたいがために、通常より高めの査定価格を提示したり、値踏みして安めの査定価格を出すなど、不利な査定価格を提案してくるケースもあり得ます。

    まず簡易査定で自分の物件の相場を把握し、だいたいの相場感を身につけてから訪問査定に臨むのがおすすめです。

    とりわけ戸建て住宅の場合は、精度の高い査定価格が必要となるので、簡易査定と訪問査定の両方を行うべきです。

    なお、マンションの場合は、相場がある程度決まっているため、簡易査定だけをベースに売却希望価格を決定する場合もあります。

    不動産の査定額を算出する方法

    不動産の査定額を算出する方法は、以下3つです。

    • 原価法
    • 取引事例比較法
    • 収益還元法

    それぞれの査定額の算出方法を説明します。

    原価法

    原価法とは、対象の不動産を再度建築したときの費用である「再調達原価」をベースに、査定額を算出する方法です。

    これは、比較的築古の戸建や1棟売りのマンション等をリフォームし再販する際や不動産鑑定評価時に用いられ、区分マンションの売却価格の査定に用いられることは稀です。

    まず、再調達原価を計算した上で、建築後の経過年数に応じた価値の低下分を割り引く「減価修正」を行います。

    再調達原価(総面積x単価)÷耐用年数×残存年数(耐用年数-築年数)

    耐用年数は建物の構造によって違い、木造22年、鉄筋コンクリート造47年、鉄骨造34年、軽量鉄骨造27年となります。

    取引事例比較法

    取引事例比較法とは、対象の不動産と条件の似ている物件の取引事例を探し、その取引価格に以下の要素を考慮して算出する方法です。

    一般的な居住用の不動産の取引において、この査定方法を使う場合が多いです。

    事情補正
    事情補正とは、「急な転勤で売り急いだ」等の価格を変動しうるバイアスを考慮すること
    時点補正
    時点補正とは、成約事例と対象物件の時系列の差による不動産相場の変動を考慮すること
    地域要因
    地域要因とは、渋滞、騒音など特定の地域にだけ存在する条件のこと
    個別的要因
    個別的要因とはリフォームの有無、日当たり等の不動産個別の違いのこと

    収益還元法

    収益還元法とは、対象の不動産が将来生み出すことが期待される純収益から、現在価値の総和を算出して査定を行う方法です。

    この査定方法は、おもに賃貸マンションなどの投資用物件の査定に用いられます。

    以下ふたつの算出方法があります。

    直接還元法
    査定額=一定期間の純利益÷還元利回り
    DCF法
    査定額=物件が将来生み出す純利益の総和の現在価値+将来の売却価格の現在価値

    これらの査定額算出方法の詳細については「不動産見積りは無料?後悔しない売却相場の調べ方と査定の注意点2つ」をご覧ください。

    査定が不動産の「正しい価値」を知るために必須な理由

    なぜ不動産の売却に査定が必要なのか、主に2つの理由が挙げられます。

    相場を把握することで適正な価格で売却が可能となる

    不動産価格の相場を知らないと、相場より低い価格で不動産を売却してしまう可能性や、逆に売却希望価格を高くしすぎて、買い手がなかなか決まらないケースもあり得ます。

    あらかじめ査定を経験しておくことで、その時点での適正な不動産価格を把握することができます。あとで後悔することのないように、相場を把握することはとても重要となります。

    不動産売却にかかる費用等の見通しが立てられる

    適正な不動産売却価格が把握できると、仲介手数料や不動産取得税などの税金等がいくらかかるか、住宅ローンの残債はどうなるのか、といった不動産売却にかかる費用等の見通しが立てられます。

    査定額の鵜呑みは要注意!損しないためのポイント3つ

    実際に査定を依頼するとき、次の3点に注意しておきましょう。

    (1)複数の不動産会社に査定を依頼する

    査定価格は不動産会社によって違いがあります。依頼するときは1社に絞らず、最低でも2~3社程度の複数の不動産会社に依頼し、査定価格を比較しましょう。

    なぜなら、1社のみに絞ると、その査定価格が相場より高いのか安いのか判断がつかないからです。物件の相場感をつかむには、複数の不動産会社に査定を依頼するのが近道です。

    (2)高額な査定価格を鵜呑みにしない

    なかには相場より極端に高い価格で査定を出す不動産会社もあります。より高い金額を提示する不動産会社と契約したくなるところですが注意が必要です。

    なぜならば、高い査定価格で依頼者をひきつけ、「専属専任媒介契約」を締結した後に、出された査定価格ではなかなか売却が決まらず、結果的に時期を逃してしまったり、値下げなどの望まない条件変更を余儀なくされるパターンもあり得るからです。

    そうならないためにも、複数の不動産会社に査定を依頼し、不動産の相場感をつかんでおきましょう。

    (3)「査定価格=売却価格」ではないことを忘れずに

    査定価格はあくまで売却における目安の価格です。その査定価格で必ず売却できるというわけではありません

    買い手がいなければ売却価格を下げる必要が出てきます。逆に、経済情勢や需要動向により査定価格よりも高く売れるケースもあります。

    査定額にばらつきがある?不動産ごとに異なる査定基準

    なぜ不動産会社によって査定価格に違いが生じるのでしょうか?

    次の2つの理由が考えられます。

    不動産会社によって査定に用いるデータが違うから

    不動産会社はそれぞれ、立地要素(徒歩・バス時間、路線・駅、都心アクセスなど)や、物件の属性要素(築年数、面積、階数など)、売買実績に基づく相場の変動等、独自のデータを持っています。

    独自のデータであるために、これをもとに査定される価格も、自然とバラツキが生じるのです。

    担当者のスキルや感性(目利き)、判断基準に個人差があるから

    特に訪問査定の場合、不動産会社の担当者の経験値や感覚などにより査定価格は上下します。特に戸建て住宅の場合は、担当者によって査定価格に差が生じやすい傾向にあります。

    ただし、マンションの場合は、築年数や駅距離等(事業主といったマンションのグレードにより違いはあります)で相場がほぼ一定なため、担当者にかかわらず、簡易査定でも訪問査定でも、査定価格に大きなズレが生じにくいです。

    査定に備えて!査定額を高くするための2つのコツ

    査定価格の通りに売れるとは限らないとはいえ、査定価格を基準として売り出し価格が決定されるのは確か。

    「できるだけ高く査定してもらいたい」ところです。不動産の査定価格を高くするためにやっておきたいことを2つ、紹介していきます。

    買主に引き継ぐことができる保証などがあるかどうかチェックする

    物件入手時に加入した保険など、新しい買主に引き継げる保証などがあるかどうか整理しましょう。

    査定の際に好印象となるだけでなく、書類が整えられていることで、不動産仲介会社も購入希望者に物件を紹介しやすくなります。

    物件売却のことも考えて、保証書類だけでなく、下記書類も整理しておくとよいでしょう。

    • 物件に関する書類:権利証、間取図、固定資産税の納税通知書、住宅ローンの残高証明など
    • 戸建て住宅の場合:設計図書、検査済証、建築確認済証など
    • マンションの場合:分譲時のパンフレットなど

    ※耐震性や耐震補強の有無、アスベストの使用、修繕積立金、修繕履歴などは、マンションの管理会社から発行される「重要事項に係る調査報告書」で最新の内容を確認したほう方が間違いないです。

    物件売却時に必要になる書類の詳細については、「専門家監修|不動産売却の必要書類をフェーズ毎に解説!チェックリスト付き」をご覧ください。

    物件をキレイにしておくこと

    特に訪問査定の場合、部屋を片付ける、家具や壁紙の汚れをきれいにする、風通しをよくするなど、ちょっとした家のお手入れも、査定価格に影響することがあります。

    査定依頼は「一括査定サイト」と「不動産会社」のどちらがおすすめ?

    いざ査定を依頼したいとなったとき、以下の2つのパターンがあります。

    それぞれのメリット・デメリットを比較・理解したうえで、どちらを選ぶべきか検討しましょう。

    一括査定サイトを利用する

    不動産一括査定サイトの仕組み

    一括査定サイトとは、不動産の査定価格を、複数の不動産会社から一括して取り寄せることができるサイトです。

    住所、立地、間取り、築年数、面積など、売却を検討している物件の簡単な情報を入力するだけで、複数の不動産会社から不動産の売却価格の査定を出してもらえます。

    メリット

    • 入力・手続きに手間がかからない
    • 査定結果の連絡が早い(当日中に届くことも)
    • 複数の不動産度会社同士で査定価格の比較ができ、不動産会社探しに役立てられる
    • 無料で利用できる

    デメリット

    • 簡易査定しか受けられない
    • 査定を依頼した不動産会社からセールスの電話やメールが頻繁に届くケースがある

    詳しい査定を受けたいなら、簡易査定の後に訪問査定を依頼しましょう。また、査定を依頼した不動産と付き合いをする気持ちがなければ、はっきりと断りましょう。

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    不動産会社に依頼する

    不動産会社に直接相談して依頼する方法です。

    メリット

    • 専門知識を要する査定の手続きをすべて不動産会社に任せられる
    • 簡易査定も訪問査定もすべて依頼することができる

    デメリット

    • 査定だけのつもりが、不動産会社が媒介契約までしようとしつこくセールスしてくることがある
    • 査定を有料にしている不動産会社もある

    事前に「今回は相談だけです」とスタンスを明確に示しましょうどうしても媒介契約をしないといけない場合は「一般媒介契約」までとしましょう。

    また、費用を抑えたい場合は、無料査定を行っている不動産会社を選びましょう。

    「査定を依頼するポイントは?」

    信頼性が高く、多くの事例を扱っているであろう大手の不動産会社に相談してもよいですし、対象物件の近隣にある中小規模の不動産業者に相談しても、地元業者ならではの情報を得ることができることもあります。

    バランスを考えながら選ぶとよいでしょう。

    なお、Webサイトがない不動産会社や、Webサイトがあっても詳しい説明がない不動産会社は避けるのが無難でしょう。

    この記事のまとめ

    • 査定には「簡易査定(机上査定)」と「訪問査定(詳細査定)」がある
    • 売却を有利に進めるなら、(1)簡易査定→(2)訪問査定の順で利用する
    • 無料・簡単・スピーディな査定が受けられる「一括査定サイト」の利用が便利

    監修者

    荒井 ー(あらい はじめ)

    アイプラン株式会社代表取締役

    アイプラン株式会社代表取締役。
    一級建築士・宅地建物取引士・インテリアコーディネーター。
    明治大学理工学部建築学科卒業後、大手住宅総合メーカーにて建設・物流部門を担当。
    同社退社後はデベロッパー等でマンション開発・建売事業・不動産売買・リノベーション事業・不動産流通事業に携わったのち2012年に独立、アイプラン株式会社を設立。 現在は主に不動産の開発・売買・仲介・リノベーション・不動産管理事業等を行っている。
    ■Webサイト
    アイプラン株式会社:http://iplan1.jp/

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