マンション売却の基礎知識

2020-12-02

【ワンルームマンション売却】損せず高く売る方法と成功ポイント

ワンルームマンションを失敗なく高値で売却するためには、必ず押さえておくべきポイントがあります。

  • 信頼できる不動産会社選び
  • 不動産会社と結ぶ媒介契約と売却方法の種類と特徴
  • 売却にかかる費用、税金
  • 売却価格の決まり方
  • 売り時の見極め方
  • 「最終的な手取りの金額がどうなるか」で考える

どれか1つが欠けても、ワンルームマンションの売却はうまくいきません。

不動産仲介会社に任せきりでは、結果がついてこないことも多いのです。

これから解説するポイントをしっかり学んで、スムーズなワンルームマンションの売却を実現させましょう。

目次

    【2020年版】マンション売却者が実際に利用した不動産仲介ランキング10社

    イエトク編集部で、マンション売却した方に「利用した不動産仲介会社」のアンケートを取りました。

    ランキングにすると、以下のとおりです。

    <マンションの売却を依頼した会社ランキング>
    No 不動産会社名
    地元の不動産
    東急リバブル
    三井不動産リアルティ
    住友不動産販売
    朝日住宅
    野村不動産グループ
    大京穴吹不動産
    センチュリー21・ジャパン
    イエステーション
    10 ME group(MEホールディングス)

    これを見ると、多くの人が地元の不動産会社に仲介を依頼していることがわかります。

    2位以降は、大手の不動産各社の名前が挙がっています。

    地元の不動産会社には、その地域に詳しいというメリットがありますし、大手不動産会社には、多くの情報や安心を求めて依頼する人が多いように見受けられます。

    実際は、利用者の多い不動産会社ほど「信頼度が高い」「高く売ってくれる」とは限りません


    ここからは、頼りになる不動産会社の選び方を解説します。

    ワンルームマンションの売却は信頼できる不動産会社を選ぼう

    ワンルームマンションをスムーズに有利な価格で売却するためには、信頼できる不動産会社・営業担当者を選ぶことが重要です。

    ここからは見極めるポイントを解説していきます。

    信頼できる不動産会社を見極めるポイント

    • 投資用物件の仲介経験が豊富
    • 適切に「コンサルティング」してくれる営業マンがいる
    • 売買件数を「こなしすぎていない」営業マンがついてくれる

    投資用物件の仲介経験が豊富

    売主が居住するマンションや空き家などを売却する場合と、投資用物件を売却する場合では、仲介をする不動産会社に求められる役割は大きく異なります。

    前者は「実需」に基づく売却で、オーナーにはその時売却しなければならない理由があります。

    不動産会社の役割は、売却が成立する妥当な価格で、不動産の流通ルートに乗せることです。

    投資用物件を売却する場合、いかにスムーズに高く売るかという部分で、不動産会社の知識や相場観が重要です。

    売り時や相場観の相談に乗ってくれたり、売り時でない場合は、待ったをかけてくれる会社は頼りになります。

    これは、後述する「コンサルティング」の話につながります。

    投資用マンションの仲介経験が豊富な不動産会社には、コンサルティング能力が期待できる担当者がいる可能性が高いといえます。

    「投資用物件専業」を標榜している業者に連絡してみたり、数年間の投資用物件扱い数や相場観、営業方針を尋ね、頼りにできるか確認しましょう。

    適切に「コンサルティング」してくれる営業マンがいる

    投資用物件の売却は、仲介業者の営業担当の「コンサルティング能力」が重要だと言われています。

    コンサルティングとは、物件の査定以前に「そもそも物件を売るべきか」というところからオーナーの事情・背景を理解して、アドバイスをしてくれることです。

    仲介手数料ほしさに、オーナーの事情や売却背景などを確認せず、売却を進めていく担当者は、話は早くても結果がプラスになると限りません。

    担当を早い段階で判断するには、地域の不動産市場・相場に対する理解や、税務関係の知識があるか見極めることが重要です。

    FP2級あるいは宅建の資格を持っているかどうかを尋ねたり、資格がなくても相応の知識があることを確認したりといった「ひと手間」をかけられるかどうかが、担当のコンサルティング能力を引き出すカギとなります。

    オーナー側にもある程度の知識が必要です。

    複数の不動産投資本やウェブサイトを読み込んでから、不動産会社を訪れることをおすすめします。

    売買件数を「こなしすぎていない」営業マンがついてくれる

    売主の事情にかかわらず、販売を進めてしまう担当者のいる不動産会社は、その収入における「歩合」の割合が高い可能性があります。

    成約数が少ないと手取りの給料が減ってしまうので、販売活動に非常に積極的です。

    担当と話す際、最初に「ひと月にどのくらいの案件を成約させているか」尋ねてみましょう。

    5件以上成約させている場合、あまり時間や労力を割いてもらえないかもしれません。

    歩合の割合が低く、固定給の割合が高い不動産会社の担当者は、ていねいに対応してくれる可能性が高いといえます。

    一般に歩合の大小は、仲介業者の規模やネームバリューとはあまり関係ありません。

    ワンルームマンション売却で知っておきたい「4つの注意点」

    ワンルームマンションの売却で損しないための「4つの注意点」は以下のとおりです。

    詳しく解説していきます。

    ワンルームマンション売却4つの注意点

    • 事前にローン残債を把握しておく
    • 不動産会社と結ぶ媒介契約の種類と特徴を知る
    • 売却価格の決まり方を知る
    • 売却にかかるコストは事前に確認する

    事前に「ローン残債」を把握しておく

    基本的に、マンションを売却する際は、住宅ローンを完済し、設定されている抵当権の抹消手続きができないと売ることができません

    ただし、以下のように「ローン残債があっても売却可能な場合」があります。

    ローン残債があっても売却可能な場合

    • 売却代金でローン残債を一括返済できる
    • 自己資金も拠出して残債を一括返済できる

    ローン一括返済をまかなえる金額で売却できる場合や、自己資金を追加して一括返済ができる場合には、抵当権抹消手続きに支障がないため問題ありません。

    居住している物件を売り、新たな物件に住み替える場合は、「住み替えローン」を利用できる場合があります。売却する物件のローンは完済できますが、投資用物件では住み替えローンは利用できません。

    ローンが残っているマンションを売る方法は下記の記事で詳しく解説しているので、ご確認ください。

    関連記事:マンション売却でローン残債があっても売れる?その方法と注意点

    仲介業者と結ぶ媒介契約の種類と特徴を知る

    仲介業者に依頼する場合は、契約の形態に以下の3通りがあります。

    媒介契約の種類 特徴
    一般媒介契約 複数の仲介業者に同時に販売活動を任せられる
    専任媒介契約 一社のみに販売活動を任せる
    専任専属媒介契約 一社のみに販売活動を任せる
    売主自身が発見した買主とは直接契約できない

    一般媒介契約は、複数の不動産仲介会社に同時に依頼でき、買い手が早く見つかる場合があります。

    ただし不動産会社にとっては、販売活動をがんばっても、他の会社に契約を決められてしまうこともあり得るので、モチベーションが低くなってしまう可能性もあります。

    専任媒介契約と専属専任媒介契約は、一社のみに絞って契約します。

    一般媒介契約とは異なり、売主からの仲介手数料収入は確定するため、比較的熱心に販売活動を行ってくれます。

    ただし、専任媒介契約・専属専任媒介契約にもデメリットはあります。

    売主・買主の両方から仲介手数料を得る「両手仲介」を狙い、自社だけで買手を探し、他社を通じた買手の打診を体よく断ってしまう「囲い込み」に遭うおそれがあります。

    一般的には、優良物件なら一般媒介契約、積極的に仲介してほしい場合は専任媒介契約・専属専任媒介契約というふうに使い分けるのがよいでしょう。

    詳しくは「マンション売却の流れとかかる期間・費用|失敗しないための注意点」を参照してください。

    売却価格の決まり方を知る

    投資用ワンルームマンションの価値は、「収益」と「利回り」で決まります。大まかに、以下の式で考えることができます。


    投資用ワンルームマンションの価格 = 年間家賃収入 ÷ 利回り

    この式の「利回り」は物件の「実力」を勘案して推定します。

    利回りを推定するには、以下のような基準が考えられます。

    • 同じ地域内で似たようなスペックの販売物件や成約物件の「表面利回り」を調べ、設備の差や築年数などを勘案し調整する
    • 株式や債券など、競合する資産の利回りを参考に「投資家の欲しい利回り」を考える
      (上記の利回りと他の金融商品との利回り差の推移を調べて、投資家のその不動産に対して期待する利回りを考える)

    このように一定の根拠をもったうえで不動産仲介会社に相談すると、担当者のロジックや知識がわかりやすくなります。

    担当者が「早く売りたいために安い値をつけようとしている」という場合にも気づくことができます。

    上の式における「利回り」は「表面利回り」といい、「グロス利回り」と呼ばれることもあります。グロスとは「総計」の意味で、単純に年間家賃の合計を物件価格で割ったものです。

    より物件の「実力」に近い指標に「NOI利回り」があります。

    NOIとは

    Net Operating Incomeの略で「純収益」を意味し、年間家賃収入から管理費・修繕積立金といった諸経費や税金などのコストを差し引いたもの

    グロス利回り(表面利回り)=年間家賃収入÷購入価格×100
    NOI利回り=(年間家賃収入-年間支出(管理費・税等))÷購入価格×100

    担当者と話すうえで、NOI利回りまで考慮しておくとより適正な値付けが可能となります。

    売却にかかるコストは事前に確認しておく

    ワンルームマンションでも、オーナー自身の居住用と投資用とで、税金の取り扱いが異なります。

    あとで予想外の出費に困らないために、売却にかかるコストを確認しておく必要があります。

    具体的にかかる費用や税金の詳細については「ワンルームマンション売却にかかる費用や税金は?」で後述します。

    ワンルームマンションを売却する方法は?

    ワンルームマンションを売却する場合、不動産会社へ依頼するのが一般的です。

    その際、不動産会社に売主を探してもらう「仲介」と、不動産会社に買い取ってもらう「買取」という2種類の売却方法があります。

    それぞれの特徴や相違点、メリット・デメリットを解説します。

    基本的なマンション売却の流れについては「マンション売却の流れとかかる期間・費用|失敗しないための注意点」で解説しています。

    「仲介」と「買取」の違いを知って適切に選択しよう

    不動産仲介と買取の違い

    「仲介」と「買取」の内容は、以下のとおりです。

    種類 特徴
    仲介
    • 不動産会社が物件の営業をして購入者を探す
    • 売却希望価格を売主が設定できる
    • 仲介手数料がかかる
    買取
    • 不動産会社自身が物件を買い取る
    • 売却価格は相場の7割程度が目安
    • 仲介手数料はかからない

    不動産売却の方法については、「失敗しない!不動産の売却方法で押さえておきたい3つのポイント」で解説しています。

    「仲介」と「買取」のメリットとデメリット

    不動産を売却する際の「仲介」「買取」のメリット・デメリットをまとめました。
    形態 メリット デメリット
    仲介
    • 不動産会社(仲介業者)がさまざまな方法で物件の営業をして、購入者を探してくれる
    • 売却希望価格を売主が設定できるため、相場価格や相場以上の価格での売却も可能
    • 売却に時間がかかる場合がある
    • 契約相手との交渉により、契約不適合責任(売却後に発見された物件の不良を負う責任)が免責できない場合がある
    • 劣化や汚れが著しいとき、リフォーム費用が必要になる場合がある
    • 仲介手数料がかかる
    • 物件を売りに出していることが第三者に知られる可能性がある
    買取
    • 不動産会社自身が物件を買い取るため、比較的短期間で売却できる
    • 仲介手数料がかからない
    • 第三者に知られず売却できる
    • 契約不適合責任(売却後に発見された物件の不良を負う責任)が免責となるケースが多い
    • リフォーム費用が不要
    相場の7割程度と、売却価格が低くなることがある

    それぞれにメリットとデメリットがありますが、端的にいうと、「売却価格」と「利便性」のトレードオフの形になっています。

    「買取」にして売却価格3割減を受け入れる代わりに、早期・秘密・面倒のない売却が可能です。

    投資用物件の処分で、売り時と売却希望価格を慎重に検討して売却に臨む場合は、「仲介」で問題ありません。

    現金が急ぎで必要だったり、誰にも知られず売りたいなどの事情がなければ、買取を選ぶ必要はないでしょう。

    ワンルームマンションの売却にかかる費用や税金は?

    投資用マンションは「事業用不動産」の扱いとなるため、オーナーが居住しているマンションに比べ、以下の理由から税金が高くなる傾向にあります。

    • 節税できる特例がない
    • 耐用年数が短く取得費の減り方が大きい

    それぞれの理由について詳しく解説していきます。

    投資用マンションは、売却時に節税できる「特例」がない

    居住用マンションには、売却で利益が発生した場合の所得税を軽減する「特例」を適用できる場合があります。

    投資用マンションは「事業用」財産となり、居住用財産の特例は適用となりません。

    詳しくは「不動産売却の税金について税理士が解説!損しないためのポイントとは?」をご参照ください。

    例外的に、以下に当てはまる物件は、特例が適用される場合があります。

    (1)賃貸に出しているマンションを売却する場合

    元々自宅として住んでおり、転居3年後の12月31日までに売却する物件であれば、その間賃貸に出して収益を受けていたとしても居住用財産として認められます。

    (2)平成21年及び平成22年(2009年・2010年)に取得した物件を売却する場合

    「租税特別措置法」により、この期間に取得した物件を売却する場合で条件を満たせば譲渡所得から1,000万まで控除できます。

    この特例には適用要件があるため、国税庁のホームページを確認し、忘れずに手続きをしましょう。

    「長期保有」となるタイミングで売却しよう!

    マンションの売却で利益が出た場合、保有期間が「5年以下か、5年超か」で課せられる所得税・住民税の税率が変わります。

    区分 所有期間 税率
    短期譲渡所得 5年以下 39.63%
    (所得税・復興特別所得税:30.63%
    住民税:9%)
    長期譲渡所得 5年超 20.315%
    (所得税・復興特別所得税:15.315%
    住民税:5%)

    5年超(売却した年の1月1日時点で5年超)の保有期間なら、売却益は「長期譲渡所得」に該当し、短期に比べて大幅に税率が低くなります。

    投資用マンションは「事業用」扱いになり、減価償却で使う「耐用年数」が短くなる

    マンションなど建物を売却する際、損失を把握するために建物の取得費を計算します。

    その際、取得費から減価償却費相当額を控除します。ここまでは投資用・居住用と同じですが、減価償却費相当額の計算方法が異なります

    仮に同じ物件でも、減価償却費を計算する際に使う「耐用年数」は、「住居用」の場合、「事業用」の1.5倍の数値となっています。

    より長い期間をかけて同じ金額(建物の価値)が減価していくことになるので、同じ期間で比べれば、減価償却額は事業用の方が大きくなります。

    建物の取得費=購入金額-減価償却費相当額」なので、事業用の方が建物の取得費が少なくなるわけです。

    建物の取得費が少なくなれば売却益は大きくなるため、居住用に比べ所得税・住民税の額も大きくなるということです。

    投資用マンション減価償却のデッドクロス問題

    投資用マンションの減価償却については「デッドクロス」という大きな問題があります。

    毎年の不動産所得あるいは事業所得を計算する際に、減価償却により建物の価値を経費計上します。例えば鉄筋コンクリート造(SRC造)であれば47年、設備は15年かけて償却します。

    建物と設備の償却期間に違いがあるため、15年目以降の減価償却額は大きく減少します。家賃収入から控除できる経費がガクンと減るわけです。

    ローンの返済が進んでいくことで、計上できる経費はさらに減ります。

    多く行われている「元利均等返済」のローンでは、返済が進むにつれて毎月の返済額に占める金利の割合が小さくなり、元金の割合が増えていきます。経費計上できる金利が徐々に減っていくのです。

    2つの経費減少が重なって、経費が家賃収入を下回り黒字になると、所得税が家賃収入を侵食し始めます。このポイントが「デッドクロス」です。

    最悪の場合、キャッシュフローがマイナスに転じ、投資用マンションの所有自体がリスクになるため、早急な売却が必要です。

    投資用ワンルームマンションを売却したときにかかる税金は?

    投資用ワンルームマンションの売却にかかる税金は以下のとおりです。

    名称 種類
    譲渡所得税 売却益にかかる。税率はマンションの所有期間によって異なり、長期保有(5年以上)の場合は15%、短期保有(5年未満)の場合は30%
    住民税 売却益にかかる。税率は所有期間により違い、長期所有で9%、短期所有で5%。
    復興特別税 所得税の金額に対して税率2.1%がかかる。
    印紙税 印紙は1万円以上の契約をする際に必要で、契約書などに貼付する。契約金額により金額は異なる。
    消費税 売り主の一昨年の課税売上高が1000万円以上だと課税対象者となり、建物部分にかかる消費税の納税義務が発生する。

    ワンルームマンション売却の相場は?価格の査定方法を知ろう

    不動産の売却価格を算出する方法は、投資用・居住用の違いによって異なります。

    簡単にまとめると、以下の表のようになっています。

    投資用 収益還元法 物件の収益性が取引価格となる。想定できる賃貸収入から、どの程度の利回りを期待できるのかを勘案して価格を算出する方法
    居住用 取引事例比較法 周辺の取引事例をベースに査定する。過去の成約事例に、立地や設備、近隣環境などの要素を加味する
    居住用 原価法 同じ建物を今もう一度建てたときにかかる費用(再調達原価)を計算し、建物の設備が老朽化している分を差し引いて物件価格を算出する方法

    詳しく見ていきましょう。

    物件の収益性が取引価格となる「収益還元法」

    収益還元法では、以下の算式で不動産の相場価格を算出します。

    【1】物件価格=純利益÷投資家が期待する利回り(%)×100

    また、投資用の販売物件の「利回り」は、家賃収入から経費・税金を差し引いた「純利益(NOI)」を「売却希望価格」で割るという作業で求められます。

    【2】純利益(NOI)÷物件売却希望価格×100=利回り(%)

    買手となる投資家は、上記の①で算出した価格を基準にして、販売されている物件の利回り②と比較し、購入の検討をします。

    この方法は、収益還元法の中でも「直接還元法」と呼ばれます。投資用ワンルームマンションの売却相場をつかむのに適した、一般的な方法です。

    この「利回り」の内容を示す重要な考え方として「ゴードンモデル」があり、以下の計算式で示されます。

    物件価格
    =純利益(NOI)÷(安全利子率+リスクプレミアム-賃料の成長率)

    「安全利子率」とは国債の利回りなど、投資元本を減らす可能性がなく、必ず得られる収益のことを言います。

    収益物件の価格を想定する際には「10年国債利回り」を用いるのが適当ですが、マイナス金利になっていることもあり、実務的には「長期プライムレート」を使うケースが多いです。

    「リスクプレミアム」とは、投資用不動産から得られる収益には空室などのリスクがつきものであることから、リスク分の収益上乗せが得られるという考え方です。

    東京都内なら賃貸需要が大きく、リスクが比較的低いので3%、地方なら5%などというふうに仮定したり、実際の取引事例などから想定します。

    「賃料の成長率」は、賃料が将来成長していく可能性を物件価格に反映させる場合に上の式のように勘案します。

    ゴードンモデルに基づき、安全利子率とリスクプレミアムがわかれば、ある程度妥当な物件価格が算出できるということになります。

    また、収益還元法には直接還元法とは別に「DCF法」(Discounted Cash Flow)という考え方があります。

    将来得られるであろう収益を考えて売却価格を求める方法で、精密な金額を算出できる一方で、計算が難解という特徴があります。

    周辺の取引事例をベースに査定する「取引事例比較法」

    取引事例比較法は中古住宅の評価方法として一般的な方法で、条件が似ている過去の事例から算出します。

    近隣地域か、同一の需給圏内にある類似地域などにおいて、対象の不動産と似た不動産の取引が行われている場合に有効です。

    評価する不動産鑑定士により評価内容に差が生じることがあります。

    国土交通省の「土地総合情報システム」で、過去に行われた不動産の取引価格を調べることができます。

    同じ建物を今もう一度建てたときにかかる費用から考える「原価法」

    原価法は、同じ建物を今あらためて建てた時にかかる費用(再調達原価)を求め、そこから築年数に応じて減価償却分を引き、土地の共有持ち分価格を加算して算出する方法です。

    積算価格=土地の価格+建物の価格(総面積×単価÷耐用年数×残存年数(耐用年数-築年数))

    再調達原価の把握と、減価修正を適切に行うことができる場合に有効です。

    不動産会社に査定してもらって調べてもらおう

    売却希望価格の算出方法を解説してきましたが、実際に自分で計算するには、「純利益(NOI)」「安全利子率」「リスクプレミアム」「賃料の成長率」あるいは「再調達原価」など、適切な数値をあちこちから引っ張ってくるだけでも一苦労。

    プロに簡単に査定してもらうには、無料で活用できる「不動産一括査定サイト」がおすすめです。

    査定依頼したからといって、必ず売却しなければいけないわけではありません。

    妥当価格の提示があった業者がいた場合、連絡してみましょう。

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    今が売り時!?ワンルームマンションの価格推移

    ここでは、マンションの売却を検討している方へ、「売り時」の考え方をお教えします。

    商業用不動産の価格平均の推移

    上のグラフは、商業用不動産の価格平均の推移をグラフ化したものです。投資用マンションは黄緑線の「マンション・アパート(一棟)」を参照します。

    ポイントは、2017年以降の黄緑線がおよそ横ばいに見えることです。この先また上がっていくでしょうか、下がっていくのかの見極めが重要になります。

    「収益還元法」で売り時を考える

    「収益還元法」で解説したゴードン・モデルの式が参考になります。

    物件価格=純利益(NOI)÷(安全利子率+リスクプレミアム-賃料の成長率)

    安全利子率、つまり金利はこれ以上下がることは考えにくいでしょう。

    リスクプレミアムが上がる(=空室リスクなどが上昇する)のか、下がるのかは、マンションの立地、地域の人口や賃貸需要により推測ができます。

    また、賃料の成長率のもととなる給与がどうなるかを考えると、現状から大幅に上がるとは考えにくいでしょう。

    上記のように、物件価格そのものを算出するには、安全利子率・リスクプレミアム・賃料の成長率の数値を求める必要があります。

    現在からこの先にかけての売り時を考えるには、それぞれの傾向を想定し、総合的に判断をするべきです。

    「最終的な手取りの金額がどうなるか」で考える

    不動産会社が物件概要書などに記載する事業収支には、一般的にはNOI、あるいは元本と利息を返済した分までが記載されている程度です。

    「デッドクロス」に関わる減価償却・ローン金利の問題や、賃料が今後も変わらず推移していくとは限らないといった、さまざまな要素を加味して、収支を長期間・総合的に想定しておく必要があります。

    保有を続けた方がいいのか、途中売却を考えるか。5年経過したあたりで一度考えるなど、賃料収入とかかった経費、そして売却収入を足し合わせた出口で利益を確定できなければ、マンション投資を行う意味がありません。

    この先、リスク想定や賃料の推移がうまくいくパターン、標準パターン、厳しいパターンなどを事前に予測しておきましょう。

    毎年定点観測を欠かさず、計画を修正しつつ、出口を常に考えておくことが重要です。

    【まとめ】投資用ワンルームマンション売却時に知っておきたいポイント

    投資用マンションは「収益性」によって価格が決まります。

    金利やリスクを加味した「利回り」を仮置きして、家賃収入から割り戻して物件価格を想定します。

    売却を検討する際は、投資物件を多く扱っている会社を選ぶことが重要です。「売るべきか、保有するべきか」からコンサルティングしてくれる担当を見極めましょう。

    税金については、投資用物件は居住用に比べ節税特例がなく、耐用年数も短いため、税金が発生しやすいという特徴があるので、販売戦略を立てる際に注意しましょう。

    投資用の不動産において、最も重要なのは、「売る時も投資」と考え、将来を見据えることです。

    「買って終わり」でも「売って終わり」でもありません。

    物件売却という出口をいったん迎えたとしても、その利益をどう運用していくかをまた考えることで、不動産投資は続いていきます。

    先を見据えて考え、決断する心構えを持ってワンルームマンション売却に臨みたいものです。


    監修者

    田中 歩(たなか あゆみ)

    1級FP技能士、日本ホームインスペクターズ協会公認ホームインスペクター・理事

    慶応義塾大学経済学部卒。三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)に17年間勤務後、あゆみリアルティ―サービスを起業。
    事業用不動産、中古住宅、投資用不動産の売買仲介・活用・運営・相続コンサルティング、ファイナンスアドバイス等を中心にビジネス展開。日経電子版などにて、不動産関連コラムを連載中。
    ■Webサイト
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    https://www.ayumi-ltd.com/

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