マンションの1階が売れない人の共通点5つとその解決法
マンションの売り物件を検索すると、高層階よりも低層階は価格が安く売り出されていることが多いようです。
特に1階となると、マンション特有の景観メリットがほぼないことから「売れない」といわれてしまうこともあります。
しかし、マンション1階の特徴を正しく理解して販売活動をすれば、それなりの価格で売却できます。
この記事では、マンション1階を売るためのテクニックや手続きについて解説します。
目次
マンションの1階が売れない人がやっていることとその対処法
マンション1階の売却がうまくいかない場合には、売主に不利になることを行っているケースが多く見受けられます。
ここでは、売れない人がやりがちな行動と、その対処法についてご説明します。
(1)不動産会社を比較せずに1社だけに依頼している
近くの不動産会社やネームバリューだけで会社を選んでいる場合、そのマンションの部屋状況を正しく理解できていないことがあります。
同じマンションの他の部屋の販売を取り扱っている会社が、必ずしも売却に長けているわけではありません。
戸建て売却を多く手がけている会社、マンション売却に頻繁に関わっている会社などそれぞれ特色があり、所属する担当者にも得意不得意があります。
本当にそのマンションの状況や評価を正しく理解しているかどうかは、直接話を聞いてみないとわかりません。
「地元だからきっと販売に強いだろう」とか「大手だからすぐに販売してくれるだろう」と考え、1社に決め打ちをするのは危険です。
そのときに提示された査定価格と販売方法に対して「こんなものなのかな?」という状況のまま販売がスタートしてしまいます。
売却においては、不動産会社の担当者の提案力、サポート力、そして売主や物件との相性がとても重要になります。
複数の不動産会社に打診してみて、その対応力を見極めるようにしましょう。
不動産会社探しで悩んだら、一括査定サイトの利用がおすすめです。
ここで気をつけておきたいことは、査定で提示される金額は「実際に売却できる金額」では必ずしもないことです。
売主からすれば、高く見立ててくれる会社に依頼をしたいところです。
しかし、わざと高い査定価格を提示して売主と仲介契約を結び、結局その金額で売れないために徐々に金額を下げていくといった手法をとる会社も多く存在します。
あるいは、担当者の知識や能力の不足により、相場から大きく外れた売出価格にしてしまったり、適切な値段でも、販売活動がうまくいかず売れ残ったりしてしまうケースもあります。
会社(担当者)比較のポイントは、「査定価格」ではなく、査定を提示する際の「根拠」と「説明力」です。
買主を探して実際に売買契約を結び、所有権を移転させるまで、さまざまな手続きを行うときの担当者のサポートも重要です。
査定根拠から今後の販売戦略、手続きの詳細まで、しっかりと説明してくれる会社であるかどうかを判断基準にしましょう。
(2)仲介契約で一般契約を選んでいる
マンション売却の仲介を依頼することになった場合は仲介契約を締結します。
この仲介には以下の3つの契約形態があります。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
不動産仲介は、実際に売買契約を成立させた時に手数料がもらえる「成功報酬型」の仕事です。
売主がたくさんの会社と「一般媒介契約」を結ぶ場合、各不動産会社からすれば、販売活動をどんなに頑張ったとしても、他社に先に売買契約を締結されてしまうと手数料は全く入りません。
そのため、最初から販売に関してあまり労力を注がないケースがあり得るのです。
上記のようなケースを避けるためには、複数の会社と打ち合わせするのは査定の段階までにすることです。
査定を経て、この会社なら大丈夫そう!と判断できたら「専任媒介」もしくは「専属専任媒介」で仲介契約を締結するようにするべきです。
ただし「専任媒介」「専属専任媒介」であったとしても、買主を自社だけで探そうとする「囲い込み」といった手法をとる不動産会社も存在します。
囲い込みをされても、買主をすぐに見つけられれば問題ないのですが、問い合わせ件数が限られるため、早期売却につながらないケースも多く見受けられます。
「囲い込み」は、不動産会社が買主・売主の両方から仲介手数料をもらうために行う手法で、売主にはほとんどメリットがありません。
仲介依頼時には「囲い込み」をせずに販売活動を行ってもらうように確認をしておきましょう。
媒介契約については「不動産売却の流れと初心者でも損をしないための注意点」に詳しい解説がありますので、こちらもご確認ください。
(3)買主のイメージが湧いていない

実際のところ、マンションの1階の購入を検討する人は少ないといえます。
逆にいうと、マンションの購入を検討するうえで、高層階の開放感などのメリットを享受できない1階の購入を考える人には、何か特別な理由があるはずです。
自分のマンションがなかなか売れない場合、この買主候補者のイメージが湧いておらず、的確な営業活動ができていないと考えるべきです。
では、どのような方がマンションの1階を求めているのでしょうか。以下で解説します。
高齢者の家庭
長年戸建て住宅に住んでいた高齢の人が、自分で建物の維持管理、手入れを行うことに限界を感じて、管理会社のいるマンションに住み替えを検討するケースがあります。
特に日頃の買い物の際に、エレベーターや階段を使わずに出かけられることや、災害時にも避難しやすいことから、1階を要望するケースも多いです。
万が一、体調が悪化したときでも、1階であれば人の往来が多く、助けを求めやすいという安心感もあります。
小さな子供連れの家庭
部屋の中を走り回ったり飛び回ったりする小さい子どもがいるために、階下の住人に迷惑をかけないかを心配する家庭も買主候補となり得るでしょう。
階下への生活音の心配は少なくて済みますし、ベランダに子どもが出て転落してしまったり、物を落としたりなどのリスクもありません。
専用庭が欲しい人
マンション暮らしでありながら、ガーデニングや家庭菜園が一緒に満喫できるのが専用庭のメリットです。
ほんの少しのスペースで良いから庭の手入れをしたい、趣味空間にしたいといったニーズがあります。
(4)相場よりかなり高い価格で売り出している
前述しましたが、高い査定額を提示した会社に仲介を依頼したとしても、必ずしもその価格で売れるわけではありません。
特にマンションでは、他の部屋も同時期に売りに出されていることがあり、比較対象が多く存在します。
一般的には面積や間取り、日照条件(南向きなど)が同じであれば、階が上になるほど相場が高くなるため、1階は階上の物件よりも安価な価格設定になりやすいといえます。
相場よりも割高で売り出してしまうと、買主から敬遠されなかなか売却できないということにつながります。
近隣の物件市場も加味した、適切な価格での売り出しを不動産会社と相談しておくべきです。
(5)内見対応に力を入れていない
買主候補者が現れたとき、実際に部屋の中を見せる「内見対応」をすることになります。
その際、部屋の中が片付いていなかったり、破損箇所があちこちにあったりすると、どんなに親切な対応をしたとしても印象が悪くなってしまいます。
買主が決まってから引き渡しまでにきれいにしておけばいいと安易に考えずに、内見対応時にポイントとなりそうなところについては、ハウスクリーニングを入れておく、補修工事をしておくなどの対策もしっかり行っておきましょう。
また、部屋の日当たりが良くなければ、窓を全開にしたり、照明を全て点けてなるべく明るく見せたりなど、演出も重要になります。
物件の間取りや方角による演出の仕方や、片付けのポイント、対応の仕方まで、不動産会社とよく相談して決めましょう。
自分のマンションに合ったアピールの仕方を教えてくれるはずです。
マンション1階が敬遠される理由

そもそも、戸建てと比べマンションの1階はなぜ敬遠されるのでしょうか。マンションならではの理由を見ていきましょう。
(1)防犯面に不安がある
エントランスホールでマンション住人以外の立ち入りを制限しているマンションもあるように、防犯面での安心を求める人は多いです。
1階の部屋は、バルコニー側の窓や屋外に開放された共有廊下からの侵入に対してやや弱いのがデメリットです。
もちろん、2階以上なら侵入されないわけではなく、マンションの低階層はこのような防犯の面での不安が評価に加味されます。
(2)日当たりが悪く、湿気が多い
マンションの周囲には何かと高い建物や構築物があるため、1階の部屋は特に日当たりが悪くなりやすい傾向にあります。
また、雨が降ったあとなどには地面に水が残っている部分もあることから、風通しが悪いと湿気がたまりやすくなり、カビ対策が必要になります。
(3)通りからの視線や騒音が気になる
マンション敷地内を往来する人からは、1階の部屋は目が届きやすく、プライベートを大事にしたい人にとっては抵抗のある場所となります。
また、道路や敷地内の車の音や人の話し声などが届きやすいのもマンション1階特有のデメリットです。
(4)虫が入ってくる
高層階の部屋は低層階と比べて、蚊やハエが入ってくることが少ないといわれます。これは虫たちの棲家が地上に近いところにあることに起因します。
高層階なら絶対に虫が出ないわけではないのですが、高所まで虫が飛んでくることは稀なため、虫嫌いな人にとっては低層階、特に1階は敬遠されます。
(5)水害に弱い
近隣に河川がある地域では、マンション1階は豪雨時の浸水リスクが高いことがデメリットです。
近年は豪雨水害が多発しており、水害に対する備えを重視する人も増えています。
マンション1階でアピールできるポイント

では逆に、マンション1階のメリットとはなんでしょうか。
マンションを売却する上ではこのメリットをしっかりと押さえておくことが、良い取引をするための必須のポイントになります。
(1)生活音を気にしなくてよい
マンションでは隣家だけでなく、下の階への音の配慮をする必要があります。
しかし、マンション1階ならば下に部屋がないため、生活音を意識しすぎずに済みます。
小さい子どものいる家庭だけでなく、杖や歩行器などを必要とする人など、生活音で下階に迷惑をかける不安がある人は1階を選ぶ傾向にあります。
(2)専用庭がある
マンション1階の部屋には、専用の庭が付属していることがあります。
一般的には、2階以上の部屋には、ベランダが設置されていますが、共用部として扱われることが多いため、プランターや植物の設置が制限されていることがほとんどです。
開放感のある専用の庭があるのは、1階ならではの大きなメリットといえます。
(3) ゴミ捨て、避難などの出入りが楽
階段やエレベーターをほとんど使用することなくゴミ出しができたり、買い物に出かけられたりするのはアピールポイントといえます。
また、停電時にエレベーターが使えなくなったとしても影響が少なく、避難がしやすいのも災害への備えの面で有利です。
手を尽くしても売れない場合はマンション自体に原因も
マンションの1階が売れないケースには、マンション1階特有のデメリットによるものだけでなく、マンション自体に問題があるものもあります。
例えば、以下の問題です。
- 管理組合や管理会社の建物維持管理計画がずさんで、建物の劣化・損傷が激しい
- 修繕積立金が相場よりも高い
- 生活関連施設(スーパーなど)が撤退してしまい、利便性が悪い
売主だけではどうにもならない事情により、マンションの評価が著しく下がってしまうこともあるのです。
買取で売却する方法
上記のように、諸事情からどうしても買手がつかない場合には、不動産会社による買取を検討してみるのも一つの手です。
一般的な市場価値よりも3割程度(もしくはそれ以上)安くなってしまいますが、仲介に比べて以下のメリットがあります。
- 部屋内の損傷や劣化部分を修繕する必要がない
- 不動産会社と直接やりとりするため、買手を探す必要がなく、迅速に売却できる
- 仲介手数料がかからない
- 契約不適合責任を問われない
- 内見などの販売活動の必要がない
さまざまな事情で早期にマンションを手放さなければならない場合などには、積極的に買取を検討してもよいでしょう。
買取についての詳しい解説は「マンション買取と仲介の違いを比較!損しないための業者選びのコツ」をご覧ください。
まずは一括査定を利用して不動産会社としっかり面談しよう
マンション1階だからといって諦めずに、まずはしっかりとしたコミュニケーションの取れる不動産会社に依頼しましょう。
そのためには、一括査定サイトなどを上手く利用して、たくさんの不動産会社のなかから、納得できる査定根拠や販売戦略を提示してくれる会社を探すべきです。
各物件のアピールポイントを押さえた適切なアドバイスとサポートをしてもらい、有利な条件での売却を目指しましょう。
実際のところ中古マンション1階ってどうなの?購入した人の体験談
実際に中古マンションの1階を購入した人はどんなところに惹かれたのでしょうか?
購入経験者の正直な感想を聞いてみました。
栃木県宇都宮市、駅から徒歩15分(夫婦)

マンションの1階部屋を購入した理由は何ですか?
上層階と比べて、値段がそんなに高くない傾向にあったからです。
購入前、マンションの1階部屋に対してどんな印象を持っていましたか?
2階からの騒音が気になる印象がありました。
購入後、1階部屋に対する印象は変わりましたか?
思ったほど騒音は気にならないです。エントランスも近いし、楽に住めて良いと思っています。
次にマンションを購入するなら1階or2階以上?
1階が良いです。上階と比べて住み心地は変わらないと思うし、コストパフォーマンスを考えると次も1階部屋を選ぶと思います。
東京都、駅から徒歩12分(夫婦、子供1人)

マンションの1階部屋を購入した理由は何ですか?
子供がいたので、落下の心配がなく庭もついている1階を選びました。
購入前、マンションの1階部屋に対してどんな印象を持っていましたか?
外から虫がよく入ってくるようなイメージがありました。
購入後、1階部屋に対する印象は変わりましたか?
購入前より印象はよくなりました。
虫とセキュリティ面に関しては少し気になりますが、足音を気にすることなく子供と庭で遊べるのは素晴らしいです
次にマンションを購入するなら1階or2階以上?
1階です。2人目の男の子が生まれるので、庭で遊ばせてあげたいからです。
広島県郊外、駅から15分(夫婦、子供1人)

マンションの1階部屋を購入した理由は何ですか?
条件が良かったマンションで、たまたま空いているのが1階だけだったからです。
購入前、マンションの1階部屋に対してどんな印象を持っていましたか?
外からの視線が気になったり、防犯面に不安がある印象がありました。
購入後、1階部屋に対する印象は変わりましたか?
正直、購入前より印象は悪くなりました。
とにかく湿気がひどくて部屋がカビだらけになったし、外からの視線も気になります。
次にマンションを購入するなら1階or2階以上?
2階以上です。湿気、外からの視線、騒音も気にならなくなるし、洗濯物の安心して干せるからです。
監修者
大野 光政(おおの みつまさ)
一級建築士、宅地建物取引士、既存住宅現況検査技術者
大金興業株式会社代表取締役。 建築士事務所、不動産業、建設業などの業務をマルチにこなす一方で、建築や設備に関連する資格を多数所持していることを活かし、2006年から生活情報サイト「All About」の公式ガイドとして建築・リフォームなどの記事を執筆。 一般消費者に建築や不動産に関わる話をわかりやすく親しみやすく伝えることをモットーとしている。 ■Webサイト 大金興業株式会社 https://www.daikin-i.com/