マンション売却の費用

2020-11-12

マンション売却でローン残債があっても売れる?その方法と注意点

所有しているマンションを売却するさいに住宅ローンが残っている場合、どうしたらよいのでしょうか?

基本的には、住宅ローンを完済し、設定されている抵当権を抹消する手続きをしないと、そのマンションは売れません

抵当権とは、住宅ローンを借り入れるときに、金融機関が担保としてその土地建物に設定する権利です。ローンの返済ができなくなったときに、その物件は競売にかけられることになります。

しかし、場合によっては、住宅ローンが残ったまま、マンションの売却を進められることがあります。

ここでは、ローンの残っているマンションを売却する方法や手続き、注意点を解説していきます。

目次

    ローン残債があっても売却が可能なケース

    任意売却と住宅ローン残債TOP

    多くの人は、マンションを購入する時に住宅ローンを利用します。

    住宅ローンを組むさいに、借入期間を35年間に設定すれば、繰り上げ返済でもしない限りは、35年後までローンを返済し続けることになります。

    しかし、現実として、35年間同じ家に住み続ける人はあまり多くありません。

    返済期間中に家族が増えて手狭になったり、死別や離別で広すぎてしまったりすることもあれば、転勤で住み続けられない場合や、リストラで返済が困難になる人もいます。

    単純に飽きて違う家に住みたくなる人もいるでしょう。生き方が多様化している現代では、住み方も多様化しています。

    返済期間中に売却する場合の住宅ローンについて、金融機関もある程度は柔軟に対応しています。

    ローンが残っているマンションの売却方法は、主に下記の3通りが考えられます。

    方法1 売却代金でローン残債を一括返済できる
    方法2 自己資金も拠出して残債を一括返済できる
    方法3 住み替えローンを利用できる

    (1)売却代金でローン残債を一括返済できる

    ここからは、残っているローンの例を交えて解説します。

    売却したときに、売却代金で残債を一括返済する見込みがあれば、ローン完済時点で抵当権の抹消ができるので、マンションを売却において何も問題はありません。

    <マンション残ローン例>

    (購入時) 購入価格 5,000万円(自己資金1000万円、借入額4000万円
    (売却希望時)売却想定額 4000万円、借入残高3000万円

    上記のイメージだと、4000万円で売却できれば、3000万円の借入残高を上回っているので、一括返済してもまだ1000万円は手元に残ります。

    ただ、ローンを一括返済するのに手数料がかかる金融機関もありますので、事前に確認しておくと良いでしょう。

    (2)自己資金も拠出して残債を一括返済できる

    売却額が借入残高より低いケースで、購入時から価格が大きく値下がりした場合や、当初の借入金割合が高い場合では、以下のような例もあり得ます。

    <マンション残ローン例>

    (売却希望時)売却想定額2500万円、預貯金2000万円、借入残高3000万円

    上記のイメージだと、売却代金が借入残高より少なくなり、売却代金だけではローンの残債分を一括返済することができません

    しかし、預貯金から差額の500万円を拠出すれば、ローンを全額返済できるので、抵当権抹消が可能になり、問題なくマンションを売却することができます。

    (3)住み替えローンを利用できる

    新たなマンション等へ住み替え(現在住んでいるマンションを売却して新しいマンション等を購入)をする場合、新たに住宅ローンを組み、そこに今までのローンの残債分を組み 込む方法もあります。

    <マンション残ローン例>

    (買換希望時)売却想定額2500万円、預貯金2000万円、借入残高3000万円
    (購入想定額)4000万円(借入希望額3000万円)

    上記イメージの場合だと、売却代金だけではローン残債を一括返済するには500万円足りません

    預貯金から拠出して返済もできますが、新たな住宅ローン3,000万円に返済しきれない500万円をプラスして、3,500万円借りることも可能です。

    住み替え(買い替え)ローンは大手銀行でも取り扱いしている一般的なローンです。

    ただ、誰でも利用できるわけではなく、借りる人の年収や物件の担保価値等が借入れ要件を満たしている必要があります。

    住み替えローンを検討するさいには、事前に金融機関に相談してみることをおすすめします。

    ローン残債があるマンションを売却するステップ・流れ

    ローン残債があるマンションも、通常のマンションと同じ手順で売却します。ひと通り流れを確認しておきましょう。

    マンション売却の流れ

    1. まずはマンションのローン残額を確認しよう
    2. 金融機関へローン残債があっても売却可能か確認をしておこう
    3. マンションがいくらで売却できそうか価格を調べよう
    4. 不動産会社を選び売却活動をしてもらう
    5. 売却・引き継ぎ

    (1)まずはマンションのローン残額を確認しよう

    現在住んでいるマンションを売却し、もっと広いマンションを購入して引っ越したいと考えたとき、まず確認しておきたいのが、現在の住宅ローン残高です。

    住宅ローンを借りたときや、途中で金利変更等があったときに、返済予定表を受け取っているはずです。

    その表を見れば現在のローン残高はすぐにわかります。

    どうしても見つからない場合は、借入れしている金融機関に再発行してもらうことも可能です。

    また、住宅ローン返済のシミュレーションができるサイトの中には、借入額や期間、金利等を入力していけば返済表が出てくるものもあります。

    それを目安にしてもよいでしょう。

    購入時に全額借入れしていたり、購入してから数年しか経っていなかったりすると、残高は思っている以上に減っていない可能性があります。

    売却の話が進んでから、ローン残高が原因で計画を断念するケースも少なくありませんので、必ず先に確認をしておきましょう。

    (2)金融機関へローン残債があっても売却可能か確認をしておこう

    借入れしている金融機関に抵当権の設定があるマンションを売却したいと言えば、売却と同時に全額返済および抵当権抹消の手続きをすると言われるはずです。

    例えば、長期固定金利住宅であるローンフラット35のホームページには「融資金の全額を繰り上げて返済するときは、繰り上げて返済される1か月前までに、ご返済中の金融機関(融資のお申込先の金融機関)にお申し出ください。」と書いてあります。

    それぞれの金融機関に条件があるので、確認したうえでクリアできるかを検討していきます。

    そのさい、買い替えを考えていることや、売却より次の購入が先の場合には、一時的に住宅ローンが2つになっても大丈夫かなども聞いてみましょう。

    一般的な質問やネット上の情報では、具体的な話は見えてこないので、借入れしている金融機関に早めに問い合わせることが重要です。

    (3)マンションがいくらで売却できそうか価格を調べよう

    売却を滞りなく進めていくには事前の準備が必要です。

    ローン残高や金融機関の事情、売却想定額などの情報は可能な限り把握するべきです。

    想定よりも高く売れそうなら、次の計画はしやすくなりますが、想定よりも厳しそうなら、住宅ローンとの兼ね合いで売却すらできないかもしれません。

    話が進んでからの大幅な変更や断念をすることがないように、焦らずに一つ一つ進めていくのがよいでしょう。

    相場については、不動産情報サイトやチラシなどに載っている類似物件からも想像できますが、あくまで売主の希望売り出し価格であり、実際の成約価格とは異なることを覚えておきましょう。

    また、不動産会社に友人や知人がいるのであれば、気軽に査定を頼んでみるとよいでしょう。

    もし信頼できる会社が身近にないようであれば、まずは一括査定サイトを利用してみるのも一つの手。

    一括査定サイトは、無料で簡単に複数社に査定依頼し、各社の査定価格を比較検討できるので便利です。

     

    ただし、簡易査定で、極端に高い査定価格を提示してくる会社には注意が必要です。

    高額で販売できるとうたって契約を取り付け、あとから理由をつけて売り出し価格を下げさせ、最終的に想定よりもかなり低い金額で売却をする、といった不動産会社もなかには存在します。

    信頼できる不動産会社を見つけるためには、それぞれの不動産会社に、査定価格の具体的な根拠や、どういった販売プランを考えているかをよく聞いておくことが重要です。

    (4)不動産会社を選び売却活動をしてもらう

    新築物件の売却のタイミングTOP

    売却予想額や時期が希望の範囲内であり、住宅ローンを含めても、販売計画も無理がなさそうであれば、実際に不動産会社へ売却の依頼をしてみましょう。

    まずは査定をお願いした不動産会社に、仲介を依頼するのがスムーズです。

    査定依頼をした段階で物件のステータスなどの必要な情報は得ており、あとは媒介契約を締結し、希望売り出し額で販売活動をするだけなので、滞りなく話を進めていけます。

    といっても、査定依頼をしたさいに、信頼できない不動産会社だと感じたら、他の不動産会社へ売却依頼をしても問題ありません。

    査定をしただけで費用を請求されることは基本的にありませんので、不動産会社はじっくり選ぶようにしましょう。

    (5)売却・引き継ぎ

    購入希望者が決まれば、契約日や引き渡し日の日程調整をします。

    学校や勤務先の年度替わりなど、売却日程に希望がある場合は、販売戦略にも影響するので、遅くとも媒介契約の時点で不動産会社へ伝えておきましょう

    また、引き渡しのさいは、住宅ローンの抵当権を抹消していなければなりません。

    売却代金で返済する場合は、買主からの入金と同時にローンの全額返済、および抵当権抹消の手続きをします。

    同時にする理由として、買主が抵当権付きの物件を購入してしまう可能性や、金融機関が担保なしの状態になってしまう可能性があるからです。

    上記のようなトラブルを回避するためにも、販売のスケジュールは事前にきちんと計画しておきましょう

    関連記事:マンション売却の流れとかかる期間・費用|失敗しないための注意点

    売却金額でローン返済できない場合は任意売却という手段も

    売却代金では住宅ローンを全額返済できそうにない場合には、任意売却という選択肢もあります。

    ローン返済が滞って、何もしないままでいると、マンションが金融機関に差し押さえられ、競売にかけられてしまうおそれがあります。

    競売は法的手続きによる強制的な物件処分のため、公告されて世間に知られることになり、引き渡し時期の調整もできません。

    しかも、競売での売却価格は市場価格の70%程度と、かなり安くなってしまう場合がほとんどです。

    この競売を避けるための手段として、任意売却があります。

    任意売却とは、物件の売却代金や預貯金で住宅ローンの残債を一括返済できないときに、所有者が金融機関の同意を得て売却する方法です。

    任意売却であれば市場に近い価格で売却できるので、負債の軽減につながり、引き渡し時期の調整も可能です。

    ローンの返済が滞る可能性があり、マンションを売却した代金ではローン残債を全額返済できる見込みがない状態であれば、早めに任意売却に詳しい不動産会社に相談してみましょう。

    任意売却の詳細については、こちらの記事「任意売却しないと損?不動産のプロが教える賢い進め方と実際の体験談」で解説しています。

    ローン残債があるマンション売却の注意点

    住宅ローンの残債があるマンションを売却すること自体は、特に難しいことではありません。

    ただし、新たなマンションなどを購入して住み替える場合には、滞りなく進めていく必要があります。また、税金面では知らないと損する制度もあります。

    以下にて、特に注意するべき3点を解説します。販売を計画する前にしっかり確認しておきましょう。

    1. ダブルローンはリスクが高いため避ける
    2. 住宅ローン控除は一つだけ
    3. 譲渡損失がある場合は申告を忘れずに

    (1)ダブルローンはリスクが高いため避ける

    ここまでは、新しいマンションや戸建てを購入するために、現在のマンションを売却して住宅ローンを一括返済するという前提で解説してきました。

    しかし、なかには現在の住宅ローンを一括返済する前(マンションの売却前)に、新しい引越し先を住宅ローンで購入しようとするケースもあります。

    この順番における最大のメリットは、マンション売却の進行状況を気にせずに、購入の話を進められることです。

    ただし、一時的にダブルでローンを組むことになるので、収入に余裕のある人(返済比率等の借入枠にダブルのローンが収まる人)しかできず、ローン返済も両方していかなければならないデメリットがあります。

    ダブルローンはリスクが高いので、基本的にはあまりおすすめできる方法ではありません

    どうしても気に入った物件があり、先に手に入れておきたい場合などには、金融機関に相談し、一度検討してみるとよいでしょう。

    ダブルローンについての詳細は、こちらの記事「ダブルローンについて知りたい!住み替えを成功させる一つの秘訣」で解説しています。

    (2)住宅ローン控除は一つだけ

    ローン残高のあるマンションを売却し、新しい物件を購入する場合に受けられる住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、一つしかないことを押さえておきましょう。

    住宅ローン控除を受けるためにはいくつか満たさなければならない要件があり、そのなかに「要件に自らが居住する住宅である」というものがあります。

    居住している住宅は一つしか認められていないため、住み替えのさいには注意が必要です。

    上記のようにダブルでローンを組む場合は、通常は新しく購入するマンションに居住することになるので、売却予定のマンションでは住宅ローン控除を受けることができなくなります

    さまざまな可能性を考慮して、どの売却方法が最適なのか十分に検討しておきたいところです。

    (3)譲渡損失がある場合は申告を忘れずに

    マンションを売却(譲渡)したときに、売却額が住宅ローン残高を下回って損をした場合は、その年の給与所得や事業所得などから控除できる制度があります。

    「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」というもので、譲渡損失が大きく、一度で控除しきれない場合は、譲渡した年の翌年から3年以内まで繰り越して控除することも可能です。

    この特例を受けるためには、売却年度の所得税について確定申告が必要です。所得税や住民税を軽減することができます。

    これは、2021年12月末までの時限制度で、新たに物件を買い替える場合でも、購入しない場合でも受けられる控除です。

    売却物件の所有期間が5年超であることや、前年・前々年に他の特例を適用していないなどの要件があるので、国税庁のホームページや税務署で確認し、忘れずに手続きをしましょう。

    不動産売却後の確定申告については、こちらの記事「不動産売却で確定申告が必要な人は?必要書類やよくある質問まとめ」でも詳しく解説をしています。

    まとめ

    売却したいマンションの住宅ローンがまだ残っていても、売却代金でローン残高を全額返済できれば、何も問題なく売却ができます。

    売却代金がローン残高を下回ったとしても、預貯金などで不足分を返済できれば問題ありません。

    それでもなお返済できない場合は、住み替えローンや任意売却などの手段もあります。

    売却以外にも、返済期間を延ばして月々の返済額を下げる、リスケなどの解決法もあります。

    対策方法はさまざまにありますので、ローン返済が滞りそうだと判明した時点で、早めに借入れしている金融機関や、不動産会社に相談してみるとこが大切です。

    監修者

    松浦 健二(まつうら けんじ)

    CFP®認定者・1級ファイナンシャル・プランニング技能士

    青山学院大学卒、ミサワホームで戸建てやアパートの営業を経験後、アイエヌジー(現エヌエヌ)生命保険会社へ転職し生命保険と投資信託の営業を経験。
    2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプランや生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する執筆や講演も多数行っている。青山学院大学非常勤講師。
    ■webサイト
    PRIVATE MONEY
    http://www.ifp.cc/

    ロゴ:家

    マンション売却の費用のお役立ち情報

    家の画像

    査定価格を無料でスピーティーに診断

    全国2000社以上を比較! SUUMO のオンライン査定