税理士監修|マンション評価額とは?計算方法や固定資産税評価額の見方
マンションの「評価額」と「査定額」は違います。
固定資産税や相続税など公的な計算をするうえで用いられるのが「評価額」であるのに対し、不動産売買のために不動産会社から提示される額が「査定額」です。
これからマンションを売ろうとしている人には、「査定額」の方が耳にする機会が多いかもしれませんが、実は不動産会社の査定においても「評価額」は参考にする要素です。
査定をするうえで、評価額をきちんと調査しているかどうかは、よい不動産会社を見極めるひとつのポイントとなります。
この記事では、主にマンションの評価額をチェックする方法をご紹介します。
計算要素が多く少々複雑ですが、この記事において重要なことは、評価額を正確に計算できるようになることではなく、仕組みを知ることです。
そして、不動産会社と打ち合わせをするときに、査定額の根拠を少しでも把握するための参考にしましょう。
目次
マンションの評価額とは?評価額にかかわる4つの指標

マンションの評価に関係する価格は、主に下記の4種類です。
- 実勢価格
- 公示価格
- 路線価
- 固定資産税評価額
それぞれがどのような役割を持っているか、説明していきます。
(1)実勢価格(時価)
実勢価格とは、実際にそのマンションの売買取引が成立したときの価格です。
特にマンションは同じマンション内の同フロア、同規模面積での取引価格が、実際の価格を推定する上で非常に参考になります。
上記に、室内の状況や当事者同士の取引条件・経済上の事情(売却を急いでいるため価格が下がるなど)の要素も加え、今後のマンションの売買金額を決定します。
不動産会社が行うマンションの査定は、実勢価格が査定価格の決定に大きな影響を及ぼす傾向があります。
購入検討者も、他の部屋がいくらで取引されているのかを参考にしているので、実勢価格は取引において重要視されているといえます。
一般的に、公示価格の110%程度が実勢価格になるといわれています。
(2)公示価格(公示地価・基準地価)
毎年、国や都道府県は公的な手続きに基づき、基準値となる場所の土地の価格を公表しています。
国(国土交通省)が公表するものを「公示地価」、都道府県が公表するものを「基準地価」と言い、これらをまとめて「公示価格」と呼んでいます。
公示価格は、公共事業等の用地買収をするときの価格決定や、土地を担保にした融資を受ける際の金融機関の評価に活用するために用いられますが、民間の土地取引においても参考にされる客観的な価格のひとつです。
公示価格は、国土交通省のホームページにて公開されています。
(3)路線価
「路線価」とは、土地に関する相続税や贈与税を算出する際に基準となる価格です。
マンションの建っている土地部分を評価するうえで、重要な評価額です。
国税庁が毎年調査を行い、道路に接する土地1㎡あたりの基準単価を指定しています。
公示価格は客観的なデータに基づいて計算されていますが、すべての地域について公表されているものではないため、相続税等の計算時には路線価を調べることが重要です。
また、査定の際は、実際の売買事例なども調査対象にはなっていますが、路線価から実勢価格を大まかに計算する場合もあります。
まず、路線価から公示価格を割り出します。路線価は公示価格の80%程度とされており、簡単な計算式は以下です。
↓逆算すると
公示価格 = 路線価 ÷ 0.8
実勢価格は先述の通り、「公示価格×1.1」前後となり、以下の式が成り立ちます。
(公示価格)
路線価も、国土交通省のホームページから確認できます。
参考:路線価図・評価倍率表
(4)固定資産税評価額
マンションなど不動産の所有者が毎年市町村(東京都23区内は東京都)に収める「固定資産税」。
「固定資産税」を算出するために用いられているのが「固定資産税評価額」です。
市町村から送られてくる納税通知に記載されています。詳しい確認方法は、後述します。
マンションの評価額をチェックするうえで、上記で紹介した価格同様、「固定資産税評価額」も重要です。
土地だけではなく、所有する建物不動産や、マンションの所有者で共有している駐車場や集会所などにも固定資産税評価額が定められています。
これらの物件の毎年の維持費用を算出したり、マンションの建物評価をしたりするうえでも参考にされる価格です。
固定資産税評価額は、実勢価格の70%程度となるように算出されています。
建物部分の査定額は、以下の算式で求めます。
実際は地域や利便性、周辺環境、マンションの管理状態などで、査定額および実勢価格が上下します。
固定資産税評価額の見方は?どこを見たらいい?
土地や建物を所有している場合、毎年市町村から固定資産税の納税通知が届きます。
その中に課税明細書が入っており、土地や建物の固定資産税(都市計画税)を決定するための根拠となる、「固定資産税評価額」が記載されています。
固定資産税の納税通知書を紛失してしまった場合は、その不動産を管轄する自治体の窓口で、「固定資産税評価証明書」を発行してもらいましょう(500円前後の発行手数料がかかります)。
注意
- 固定資産税評価額ではなく「価格」と記載されている自治体もあります。東京都では「価格」と表記されています。
- 自治体ごとに課税明細書の書式は異なります。
- 「固定資産税評価額」と「課税標準額」は異なります。「課税標準額」は、あくまで税額を算出するための金額であり、税率をかけて固定資産税を算出する基の金額になります。一定の要件を満たす住宅用の土地などで、税額軽減が適用になる場合では、「固定資産税評価額」よりも低い金額になっています。
- 固定資産税評価額は経済情勢などを踏まえ3年ごとに見直されます。そのため、以下の計算額と実際の評価額に差が生じます。目安として判断ください。
分譲マンションの評価額の計算方法は?

家やマンションといった不動産を所有するためには、一般的に「建物」だけではなく「土地」にも所有権(もしくは敷地の利用権)が設定されています。
そのため、マンションの評価を考えるときは「土地部分」と「建物部分」を分けて考える必要があります。
また、土地も建物も全体に対して、自分がどれだけ「共有持分(もちぶん)」を持っているかで評価が大きく左右します。
共有持分とは?
マンションの敷地や自分の部屋の他、住人間で使用するエントランスホール、駐車場、施設などに設定されています。
マンション購入時の「売買契約書」か、法務局で入手できる「登記事項証明書」で確認できます。
「土地部分」の評価額を算出する方法
まず、土地部分の評価額を算出してみましょう。
国土交通省「路線価」のページからマンションがある地域の地図を見つけます。
路線価図内の道路には、「数字およびアルファベット」が記載されています。
自分のマンションが接道している道路に記載されている「数字」×1,000円がマンションの土地1㎡あたりの単価となります。
例えば、所有しているマンションの敷地(1,200㎡とします)の共有持分が「2,450,000分の69,200」だったとします。

上図の路線価図表、赤枠部分「98D」と記載された道路に接道している(その道路からマンションの敷地に入る)と仮定して、敷地の1㎡あたりの単価は98,000円となります。
計算式は以下の通りです。
(路線価による評価)
1,200㎡ × 98,000円 × 69,200/2,450,000 = 3,321,600円
この路線価による評価額を、おおよその実勢価格に変換すると以下のようになります。
(おおよその土地の実勢価格)
3,321,600 ÷ 0.8 × 1.1 = 4,567,200円
「建物部分」の評価額を算出する方法
建物部分を評価する場合は、固定資産税評価額を参考にします。
例えば、マンション建物の固定資産税評価額が6,700,000円、車庫250,000円、集会所32,000円とします。
以下は計算式です。
(固定資産税評価額)
6,700,000円 + 254,000円 + 32,000円 = 6,986,000円
この固定資産税評価額から実勢価格を算出してみましょう。算式は以下です。
(おおよその建物の実勢価格)
6,986,000円 ÷ 0.7 = 9,980,000円
土地と建物の実勢価格を合計します。
(おおよその土地・建物の実勢価格)
4,567,200円 + 9,980,000円 = 14,547,200円
周辺環境やマンションの管理状況などで、実際の査定額や売買価格は上下します。
上記の方法で得られる実勢価格は、あくまで「目安」であると理解しておきましょう。
【シミュレーション】築年数ごとの具体的な例

ここまで、不動産の評価について紹介してきました。
マンションを所有し続ける時は、「固定資産税」がいくらかかるか、重要です。
築年数ごとに、固定資産税の額がどのように変化するかシミュレーションしてみましょう。
シミュレーション例
- 都内:鉄筋コンクリート造のマンション
- 専有面積:70㎡
- 新築時の建物固定資産税評価額:900万円
- 土地の固定資産税評価額:3,500万円
注意点
- マンションは新築時から5年間は固定資産税が軽減される特例が適用されていますが、今回のシミュレーションでは中古住宅の売却を検討する上での参考とするため、築10年と築25年について試算しました。
- 土地については200㎡以下の小規模住宅用地の軽減特例(課税標準額が1/6になる)がありますが、この措置が今後も継続されるという前提で算出しています。
- 固定資産税の根拠となる課税標準は3年ごとに見直されます。また、再建築費(もう一度その建物を建築するためにかかる費用)の補正も行われることから、以下の試算は必ずしも実際の税額とは一致しないことをご了承ください。
- 土地の評価額は今後も変わらないという前提で算出しています。
- 実際には固定資産税(税率1.4%)と併せて都市計画税(税率0.3%)も課税されますが、本シミュレーションでは固定資産税のみの計算としています。
築10年のマンション
建物は古くなるほど価値が下がることが一般的です。
そのため、東京都では総務省発行の「非木造家屋経年減点補正率基準表(住宅、アパート用建物)」より、新築時の固定資産税評価額を見直しています。
■経年減点補正率(5年ごとを抜粋)
経過年数 | 経年減点補正率 |
---|---|
5年 | 0.682 |
10年 | 0.6386 |
15年 | 0.5947 |
20年 | 0.5509 |
25年 | 0.5070 |
30年 | 0.4632 |
35年 | 0.4193 |
40年 | 0.3754 |
45年 | 0.3316 |
50年 | 0.2877 |
55年 | 0.2439 |
60年以上 | 0.2000 |
総務省発行「固定資産評価基準」令和2年6月16日 総務省告示第191号より抜粋
10年後の経年減点補正率は0.6386です。
建物の固定資産税額:
900万円 × 経年減点補正率0.6386 × 固定資産税標準税率1.4% ≒ 80,463円
土地の固定資産税額:
3,500万円 × 軽減特例1/6 × 固定資産税標準税率1.4% ≒ 81,666円
固定資産税合計:
80,463 + 81,666 = 162,129円
築20年のマンション
20年後の経年減点補正率は0.5509です。
建物の固定資産税額:
900万円 × 経年減点補正率0.5509 ×固定資産税標準税率1.4% ≒ 69,413円
土地の固定資産税額:
3,500万円 × 軽減特例1/6 ×固定資産税標準税率1.4% ≒ 81,666円
固定資産税合計:
69,413 + 81,666 = 151,079円
築30年のマンション
30年後の経年減点補正率は0.4632です。
建物の固定資産税額:
900万円 × 経年減点補正率0.4632 ×固定資産税標準税率1.4% ≒ 58,363円
土地の固定資産税額:
3,500万円 × 軽減特例1/6 ×固定資産税標準税率1.4% ≒ 81,666円
固定資産税合計:
58,363 + 81,666 = 140,029円
相続したマンションの場合

相続したマンションの計算は少し複雑です。実際は、相続税の申告を税理士に依頼して、評価額も正確に計算する必要があります。
この章では、おおよその評価額を把握することを前提に、正確な額を算出する計算手続きと事例を解説します。
不動産評価と異なるところは、
国税庁の路線価の図に基づいた1㎡あたりの土地評価の他に、奥行価格補正表の「奥行価格補正」「側方路線影響加算」「二方路線影響加算」といった補正率をかけて、対象となる敷地の利便性を考慮し土地の評価額を算出する点です。
以下、シミュレーションをしてみましょう。
(シミュレーション物件例)
都内にある鉄筋コンクリート造のマンション
所在地:(所在地番)東京都○○区○○1-2-34
(住居表示)東京都○○区○○1-24-5
地積:1,300.00㎡
持分:7,900/175,000
対象地の状況:間口 43.45m、奥行30.45m
路線価:図のとおり(正面530,000円、側方500,000円)
マンション(建物)の固定資産税評価額 10,143,000円

評価額の計算
1.土地の相続税評価
まずは、土地の相続税評価額を計算します。
相続税申告の際は、以下のような評価明細書を作成します。

出典:土地及び土地の上に存する権利の評価明細書(第1表)(国税庁)
評価明細書のとおり、
(1) 正面路線に対する敷地の奥行に応じて、奥行価格補正表に記載された補正率(奥行距離28〜32mの場合は0.95)を乗じます。
530,000円 × 奥行価格補正率 0.95 = 503,500 円
1㎡当たりの価額 503,500円
(2)側方路線に対する奥行に応じて補正率(奥行距離40〜44mの場合は0.91、角地にあるので側方路線影響加算率0.03)を乗じ、①で求めた価額に加算します。
503,500円 + (側方路線価 500,000 × 奥行価格補正率0.91 ×側方路線影響加算率0.03) = 517,150円
1㎡当たりの価額 517,150円
(3)2で求めた価額に面積を乗じ、更に持分を乗じた金額が評価額です。
517,150円 × 1,300㎡ × 持分 7,900/175,000 = 30,349,317円
2.建物の相続税評価
建物の相続税評価額を求める式は、固定資産税×1.0=固定資産税と同額になります。
固定資産税評価額 10,143,000円×1.0 = 10,143,000円
3.マンションの相続税評価額
上記で算出した土地と建物の評価額の合計が、物件の相続税評価額になります。
土地 30,349,317円 + 建物 10,143,000円 = 40,492,317円
多くのマンションは「路線価方式」で計算され、路線価が定められていない地域は「倍率方式」にて計算する必要があります。
この場合は、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて計算します。
倍率表は、国税庁の路線価図と併せて掲載されています。
一括査定サイトを上手に活用しよう!

本記事で紹介した固定資産税評価額や路線価のみの評価は、必ずしも相場を反映しているものではありません。
マンションの実売価格は、エリアやそのマンションの人気度にも影響されます。
しかし、購入希望者にとって、維持管理経費の一環として税額の大小はとても重要です。
かかる税金や費用すべてを割り出すことは難しいですが、今回の方法に加え、不動産会社の力を借りると大まかな予測ができます。
各種要素を意識しながら、正確な販売戦略を立てることができます。
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その際は、提示された査定額をそのまま鵜呑みにせず、根拠やデータをよく聞き、納得したうえで、会社を選びましょう。
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■記事監修
監修者
大野 光政(おおの みつまさ)
一級建築士、宅地建物取引士、既存住宅現況検査技術者
大金興業株式会社代表取締役。 建築士事務所、不動産業、建設業などの業務をマルチにこなす一方で、建築や設備に関連する資格を多数所持していることを活かし、2006年から生活情報サイト「All About」の公式ガイドとして建築・リフォームなどの記事を執筆。 一般消費者に建築や不動産に関わる話をわかりやすく親しみやすく伝えることをモットーとしている。 ■Webサイト 大金興業株式会社 https://www.daikin-i.com/
■税金監修
監修者
末廣 日出則(すえひろ ひでのり)
税理士
岡山県岡山市出身、昭和44年生まれ。上場食品メーカーの経理部、企画開発部を経て、ベンチャー起業へ転職しIPOを担当。これらの経験を活かすため税理士試験を受験し、平成19年税理士試験合格。都内の税理士事務所2ヶ所で実務経験を積み、平成22年4月「末廣日出則税理士事務所」を新宿区西新宿に開設。法人業務を中心に、近年は相続をはじめとする個人・資産税業務に力を入れ、個人から法人まで幅広い分野に対応している。 ■Webサイト 末廣日出則税理士事務所 https://www.suetax.com/