マンション売却の費用

2021-03-31

マンション売却にかかる費用とタイミングは?プロ監修の節約方法も紹介

所有しているマンションを売却するとき、各種費用がかかることは知っていても、どのくらいかかるかはイメージしづらいものです。

仲介手数料などの大きな額のものから、ちょっとした手数料まで、また、契約時に支払うものもあれば、物件の引き渡し後に払うものもあります。

計画的に売却できるよう、諸費用について事前に理解し、自分で概算を計算できるくらいにはしておきたいものです。

この記事では、マンションを売却したときにかかる費用について、種類と払うタイミングなどについて、ひと通りまとめて解説します。

費用を賢く節約する方法も併せてご紹介します。

目次

    マンションの売却でかかる費用一覧とそのタイミング

    マンションを売却する際にかかる費用は主に下記の3種類が挙げられます。

    売却額(取引額)からこれらの諸費用を引いた額が手元に残ります。

    内容 支払タイミング
    仲介手数料 売却を依頼した不動産仲介会社に対して払う成功報酬 一般的には契約時に50%、引渡し時に残りの50%を支払う
    税金 1 印紙代
    2 所得税
    3 住民税
    1:売買契約時に売買契約書に貼る
    2・3:譲渡益が出た場合の確定申告時
    登記費用 抵当権等の抹消登記費用と手続きをする司法書士の報酬など ローン返済時に支払う

    その他、住宅ローンを借りている人であれば、売却時に一括返済する際、金融機関によっては期前返済手数料(ローンを期日前返済する場合の手数料)を払う必要があります。

    売却する際に室内をクリーニングやリフォームをする場合は、それらの費用もかかります。

    では、図表内の費用について、一つ一つ詳細に見ていきましょう。

    マンションの売却の仲介手数料の相場はいくら?上限がある?

    マンションの売買自体は個人間でも可能ですが、買主を探したり、契約を円滑に進めたりするには、不動産仲介会社に依頼して売却活動をするのが一般的です。

    不動産会社に仲介をしてもらい、買主との売買契約が成立した際に、不動産会社へ支払うのが不動産仲介手数料です。

    支払い方法は契約時に50%、引き渡し時に残りの50%を払うのが一般的ですが、特に決まりがあるわけではないので、不動産会社と交渉をして別の方法で支払うことも可能です。

    仲介手数料の上限額は、以下のように定められています。

    仲介依頼者の一方から受け取れる不動産仲介手数料の報酬上限額
    取引額 仲介手数料(税抜)
    200万円以下の金額 取引額の5%
    200万円超~400万円以下の金額 取引額の4%
    400万円超の金額 取引額の3%

    仲介手数料を取引額ごとに計算したものが下記の表です。

    仲介依頼者の一方から受け取れる不動産仲介手数料の報酬上限額の目安
    取引額 仲介手数料(税込)
    100万円
    55,000
    500万円
    231,000
    1000万円
    396,000
    2000万円
    726,000
    3000万円
    1,056,000
    4000万円
    1,386,000
    5000万円
    1,716,000
    6000万円
    2,046,000
    7000万円
    2,376,000
    8000万円
    2,706,000
    9000万円
    3,036,000
    10000万円
    3,366,000

    表に記載の仲介手数料は、不動産会社が依頼者の一方から受け取れる上限額を示しています。

    簡単に仲介手数料の上限を割り出す方法として、売却金額が400万円を超える場合は、「売却金額の3%+6万円と消費税」という速算法があります。

    なお、価値の低い空き家など(400万円以下の物件)の売買については特例が設けられ、仲介手数料の上限額が18万円+消費税と定められています。

    (1)仲介手数料のよくある質問
    Q.値引きはできる?

    仲介手数料は、上記の表で設定されている上限を超えることはできませんが、下回ることは可能です。

    値引きできるかどうかのポイントは、依頼する不動産会社の考え方によるところが大きく、過去に値引きをしたことのある会社や、状況次第では値引き可能と考えている会社であれば、交渉することは十分可能です。

    ただ、不動産会社に限ったことではありませんが、会社は利益を上げることが大前提なので、無条件で値引きしてくれることはまずありません。

    仲介手数料が適切ではないと感じた場合に、根拠と希望額を伝えて交渉するとよいでしょう。

    交渉する場合は、媒介契約締結の前がよいですが、例えば売主が購入希望者を見つけてきたような場合などは、仲介会社の業務が大きく省けるので、契約締結後でも交渉の余地はあります。

    (2)仲介手数料のよくある質問
    Q.仲介手数料が無料の不動産はある?

    ネット上や折り込みチラシの中には、売主から受け取る仲介手数料を無料にしている不動産会社もあります

    本来受け取れる仲介手数料を無料にするという大胆な戦略ですが、この場合、不動産会社は、マンションを購入する人から仲介手数料を受け取り、利益を確保しようとしていると考えてよいでしょう。

    薄利になってしまいますが、あまり手間がかからずに売れるような物件であれば、数を多く売却することで十分に利益を確保できるという仕組みです。

    マンションの売主にとっては、仲介手数料などの費用は、安ければそれだけ手元に残る資金が増えるので、ありがたいと思う人もいるかもしれません。

    しかし、仲介手数料は不動産会社に支払う成功報酬なので、これが無料となると、担当者のモチベーションを下げる要因にもなり、結果的に売却活動の遅延などにもつながります

    「少しでも高く」「少しでも早く」売れることを希望しているのであれば、きちんと仲介手数料を支払うことを前提に、率先的に売却活動を行ってくれる不動産会社を選ぶことをおすすめします。

    マンションの売却でかかる税金について

    マンション売却にかかる税金には、売買契約書に貼って納める印紙税と、譲渡益が出た場合にのみ納める所得税・住民税があります。

    特に所得税と住民税は場合によっては高額になり、物件の引き渡し後に納めることになるので、慌てることのないように事前に理解をしておきましょう。

    (1)必ずかかる税金「印紙税」

    国税庁の印紙税の手引きには「印紙税は、日常の経済取引に伴って作成する契約書や金銭の受取書(領収書)などに課税される税金」と定められています。

    マンションを売却するときの売買契約書も課税対象の文書になるので、納税義務が発生します。

    売買契約書に印紙税相当額の収入印紙を貼って納税し、押印もしくは署名をするといった手続きになります。

    現在は、「所得税法等の一部を改正する法律」により租税特別措置法の一部が改正され、「不動産譲渡契約書」などについては、令和4年3月31日までに作成される契約書は印紙税の軽減措置が適用されています。

    印紙税の一覧は以下の通りです。

    契約金額(不動産譲渡契約書) 軽減後の税率 本則税率 軽減割合
    10万円超~50万円以下
    200円
    400円
    50%減
    50万円超~100万円以下
    500円
    1,000円
    50%減
    100万円超~500万円以下
    1,000円
    2,000円
    50%減
    500万円超~1000万円以下
    5,000円
    10,000円
    50%減
    1000万円超~5000万円以下
    10,000円
    20,000円
    50%減
    5000万円超~1億円以下
    30,000円
    60,000円
    50%減

    契約金額が10万円以下、もしくは契約金額の記載のない場合は、軽減措置の対象にならず税率200円で、契約金額が1万円未満の場合は非課税となります。

    (2)利益が出たらかかる税金

    マンションを売却して利益が出た場合は、給与所得や事業所得とは分けて計算(分離課税)して、所得税と住民税を払う必要があります。

    所得税は確定申告で申告・納税をし、住民税は翌年度に送られてくる納税通知書にて納税します。

    ■長期譲渡所得か短期譲渡所得の判断

    税額を計算する際、マンションを所有していた期間によって、かかる税率が変わりますので、長期譲渡所得か短期譲渡所得のどちらに該当するかの確認が必要です。

    所有期間 税率
    長期譲渡所得 譲渡した年の1月1日の時点で所有期間が5年超 所得税15%・住民税5%
    短期譲渡所得 譲渡した年の1月1日の時点で所有期間が5年以下 所得税30%・住民税9%

    平成25年(2013年)から令和19年(2037年)までは、復興特別所得税として基準所得税額の2.1%を所得税と併せて納めます。

    例えば、2015年3月に購入したマンションを2020年10月に売却すると、実質の所有期間は5年7ヶ月です。

    しかし、譲渡所得の計算をする際は、売却した年である2020年の1月1日時点で判断するため、所有期間は4年10ヶ月となり、短期譲渡所得の扱いとなります。

    税率を見てわかる通り、長期と短期では税率にかなりの差が出てきます。

    そのため、売却して利益が見込めそうな場合は、特別な事情がない限りは、長期譲渡所得に該当する所有期間になってから売却したいところです。

    ■譲渡所得の計算方法

    個人がマンションを売却したときの課税譲渡所得金額を計算するには、下記の計算式を用いて求めます。

    譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除

    譲渡価格…マンションを売却した価格
    取得費…マンションを購入した時の購入代金や購入手数料等の合計額。
    なお建物の取得費は所有期間中の減価償却費相当額を差し引く必要があり、取得費が不明の場合は、譲渡価格の5%を概算取得費にすることも可能。
    譲渡費用…売却した時の仲介手数料や印紙代など
    特別控除…居住用財産の3000万円控除など

    特別控除とは、いくつかの要件を満たす場合に受けられ、課税譲渡所得から控除額を差し引くことで、税金を減らすことができます。

    以下は、マンションの売却の際に受けられる控除の例です。

    ■マイホームを売却した時の軽減税率

    自分が居住していたマンションを売却した場合は、要件を満たせば長期譲渡所得の税額を軽減させる制度があります。特例を受けるには確定申告が必要です。

    特例を受けるための要件

    • 日本国内の自らが居住していたマンションであり、直近は住んでいない場合は、住まなくなってから3年を経過した日の年末12月31日までに売却
    • 売却した年の1月1日の時点で所有期間が10年を超えている
    • 売却した年の前年か前々年にこの特例を受けていない
    • 売却したマンションで、マイホームの買換えや交換の特例等、他の特例を受けていない。3000万円の特別控除の特例と軽減税率の特例は併用可能
    • 特別な関係の人(親子や夫婦等)に対しての売却ではない
    マイホームを売却した時の軽減税率
    課税長期譲渡所得金額 税額
    6000万円以下の部分 所得税10%・住民税4%
    6000万円超の部分 所得税15%・住民税5%

    平成25年(2013年)から令和19年(2037年)までは、復興特別所得税として基準所得税額の2.1%を所得税と併せて納めます。

    ■居住用財産の3000万円特別控除

    居住していたマンションを売却した場合、譲渡所得から特別控除として最大3000万円を差し引くことができる特例です。

    特例を受けるための要件

    • 所有者が居住している住宅で、以前居住していた場合は、居住しなくなってから3年目の年末までに売却
    • 売却した年の前年か前々年に同じ特例等(他に特定居住用財産の買換え・交換の特例等)を受けていない
    • 特別な関係の人(親子や夫婦等)に対しての売却ではない
    • 別荘や一時的な仮住まいの売却ではない

    なお、マンション売却後、次のマイホームを、住宅ローンを利用して購入する場合に受けることのできる住宅ローン控除は、この居住用財産の3000万円特別控除と併用することができません

    それぞれのパターンでかかる税金を計算して、有利な方を選ぶ必要があります。

    マンションを売却した場合の税金に関しては、他にも優遇制度等がたくさんあります。

    利用できる控除を知らないままだと、支払う税額が百万円単位で変わってしまうこともあるので、国税庁のホームページや税務署で十分に確認してから手続きを進めたいところです。

    手続きに不安がある場合は、税理士に依頼してしまうのがおすすめです。

    マンション売却の登記費用について

    マンションを売却する場合に、必要に応じて、登記費用がかかります。

    売却するマンションに、住宅ローンを利用していて抵当権が設定されている場合は、金融機関へ残債を返済して、抵当権を抹消してもらいます。

    抹消の手続きは時間がかかる場合もあるので、事前に借入している金融機関に確認しておきましょう。

    抵当権を抹消するときは登録免許税や司法書士の報酬などがかかり、登録免許税は不動産一筆につき1000円、司法書士への報酬は1~2万円程度のようです。

    その他クリーニング・リフォームなどの諸費用相場

    今まで住んでいたマンションを売却する場合、室内はそれなりに汚れているので、買主が入居するまでに、居住可能な状態まで綺麗にする必要があります。

    軽い汚れならハウスクリーニング程度で済みますが、汚れが目立つ場合や、築年数がかなり経過している場合は、室内を全てリフォームする必要性も出てきます。

    費用の負担は売主か買主のどちらか、交渉によっては双方が負担する場合もあります。

    70㎡程度のファミリーマンションの場合、数十万円で済むこともあれば、500万円を超えることもあり、どの程度手を加えるかによってまちまちです。

    売手としては、一度クリーニング・リフォーム費用を負担し、部屋を最大限見栄えをよくして、売却価格を高く設定するという方法もあります。

    どのような販売戦略をとるか、売却依頼をした不動産会社と話し合い、綿密な計画を立てるようにしましょう。

    売却で戻ってくるお金

    マンションを売却したことで一部お金が戻ってくることもあります。多くの場合は、先払いした費用の未経過分です。

    売却で戻ってくる費用としては、以下のようなものが挙げられます。

    • 火災保険料…例えば10年分の補償の保険料を一括で支払い、10年経たずに売却した場合、経過していない分の保険料が払い戻される
    • 固定資産税・都市計画税…1月1日時点の所有者に課税される税金だが、多くの場合、引き渡し日を基準に負担額を案分するので、支払済みなら購入者から一部受取可能
    • 住宅ローン保証料…借入期間分の保証料を最初に支払い済みのため、売却により途中で一括返済した場合は、未経過分が払い戻される

    ちなみに、マンションの居住時に支払っていた管理費や修繕積立金などは、原則として返還されない場合が多いので、注意が必要です。

    なるべくコスト削減したい!不動産のプロ監修「節約する方法」

    マンションを売却するときに、できる限りコストを削減して手元に残るお金を多くしたいものです。

    そのためには、売却価格を高くするか、諸費用を減らすことが大きなポイントになります。

    特に仲介手数料は大きな負担となりますので、値引きを実現できれば、その効果は大きいです。

    売却したい物件が、手間をかけずにすぐに買主が見つかりそうな場合などには、不動産会社に値引き交渉をするか、あるいは元々仲介手数料を安く設定している会社に依頼するというのもひとつの手です。

    また、売却益が出た際に支払う譲渡所得税を、できるだけ軽減させることも大切です。

    「居住用財産の3000万円特別控除」などの優遇制度をできる限り利用することや、短期譲渡所得にならないよう、短期間で売却しないことなどは確実に抑えておきたいポイントです。

    その他、簡単なハウスクリーニングなどは、自分ができる範囲で手を加え、費用を抑えることが可能です。

    リフォーム工事をする場合でも、シャワーヘッドの交換や鍵の交換などは、慣れている人であれば、自分で部品を購入して作業ができるため、コストの削減になります。

    また、引っ越しを業者に依頼するときなどは、繁忙日を避ければ割安になる場合があります。

    さまざまなタイミングでかかる費用を考慮し、効率のよい選択をして、うまくコストを削減するようにしましょう。

    まとめ

    マンションを売却するということは、非常に大きなお金が動く、一大イベントと言っても過言ではありません。

    売却活動には多くの人が関わり、多くの費用が発生します。失敗しないためには、不動産会社とうまく連携し、自分の物件や、それに関わる費用をよく知っておくことがとても重要です。

    不動産会社やリフォーム業者などによく相談・交渉した上で、最終的に納得のいく売却活動ができるように心がけましょう。

    監修者

    松浦 健二(まつうら けんじ)

    CFP®認定者・1級ファイナンシャル・プランニング技能士

    青山学院大学卒、ミサワホームで戸建てやアパートの営業を経験後、アイエヌジー(現エヌエヌ)生命保険会社へ転職し生命保険と投資信託の営業を経験。
    2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプランや生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する執筆や講演も多数行っている。青山学院大学非常勤講師。
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