土地売却の流れ|損しないための注意点や不動産の選び方をプロが解説
不動産には、新築戸建、中古戸建、区分所有マンション、アパート一棟、ビル一棟など様々な形態がありますが、いずれも「土地」が付帯した資産となります。
「土地」は、売却手続きの中で押さえておくべき最も重要な部分であり、「土地売却」は売却の基本系となります。
今回は、土地売却の流れと手続きについて詳しく解説します。
この記事の監修者
田中 歩(たなか あゆみ) あゆみリアルティ―サービス代表
1級FP技能士、日本ホームインスペクターズ協会公認ホームインスペクター・理事。
事業用不動産、中古住宅、投資用不動産の売買仲介・活用・運営・相続コンサルティング、ファイナンスアドバイス等を中心にビジネス展開。

目次
土地売却の流れ6ステップと期間
土地売却の流れには、おおまかに6つのステップがあります。
- 査定を依頼(相場調査)
- 媒介契約
- 売却活動
- 購入希望者との交渉
- 売買契約
- 決済・引き渡し
おおまかではありますが、step1~2で2~3週間、step3~4で1~3か月、step5~6でも1~3か月かかるといわれています。
次の見出しから、それぞれのステップごとの注意点やポイントなども交えて解説していきます。
まずは準備!売却前に絶対すべき「相場の調査」
土地の売却に進む前に、事前情報収集として、相場を調べてみるとよいでしょう。
この先不動産会社とやり取りをする際に、相場観を知っていたほうが、安くたたき売りされるリスクなどが減ります。
相場を知る簡単な方法として、以下の3つの方法があります。
- 国土交通省地価公示や都道府県地価調査のデータを参考にする
- 正面路線価を0.8で割る
- 固定資産税評価額を0.7で割る
国土交通省地価公示や都道府県地価調査は、時価と乖離している面はありますが、不動産鑑定士が鑑定しており、Webサイトで簡単に調べることができます。
正面路線価は、相続税法上の土地評価額で地価公示の概ね8割程度で設定されていますので、所有土地の正面路線価を調べて0.8で割り戻せば、地価公示の水準に変換できるわけです。
固定資産税評価額は、固定資産税などを算出するための評価額です。
評価額は納税通知書などに記載されており、地価公示の概ね7割程度で設定されています。
0.7で割り戻せば地価公示の水準に変換できます。
その他、取引事例や新築戸建て販売事例から建物価格を控除した土地の推定時価を、路線価比準方式(取引事例の路線価と所有地のそれとの比率)を使って、もう少し精度の高い査定額を自ら算定する方法もあります。
関連記事:土地売却の相場を簡単に調べる方法と失敗しないためのポイント
土地の相場を自分で調べた後は、売却活動の第一段階、査定の依頼に移ります。
step1.査定を依頼する
査定とは、過去の成約データベースやさまざまな条件をもとに、不動産のおおよその販売できそうな価格を算出することです。
簡易査定と訪問査定とがあり、それぞれの特徴は以下で説明します。
簡易査定とは
簡易査定とは、過去の取引事例などを使って机上で価格を査定するものです。
AIや機械学習を利用した査定も簡易査定の一つです。短時間での査定が可能ですが、土地それぞれの個別性(平坦か否か、周辺環境など)を反映できない場合があります。
訪問査定とは
訪問査定は、現地を検分し土地の個別性も勘案した上で査定を行うものです。査定には一定の時間がかかりますが、査定の精度は上がると言われています。
一般的に、一括査定サイトを通じて簡易査定を複数社に依頼した中から1、2社に訪問査定を依頼し、買主探しを依頼する不動産会社を絞り込んでいきます。
step2.媒介契約を結ぶ
不動産会社を選んだら、媒介契約を締結します。
媒介契約には、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。
- 一般媒介契約
- 複数の不動産会社に買主探しを依頼できる契約です。売却予定の土地が売りやすい物件であれば「一般媒介契約」で複数社に買主探しを競争し合ってもらう方法もあります。
- 専任媒介契約
- 一社にしか買主探しを依頼できない契約です。「一般媒介契約」に比べ、依頼された不動産会社のモチベーションが高まるというメリットがあります。 一方、自社の抱える買主のみにセールスして収益を極大化しようとしがちになり、必ずしもスムーズに成約しない可能性があると言われています。
- 専属専任媒介契約
- 「専任媒介契約」の制限に加え、売主が自ら買主を探すことも制限する契約
3種類の媒介契約それぞれの特徴は、下記の通りです。
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
---|---|---|---|
他社への重ねての 仲介依頼 |
不可 | 不可 | 可 |
自ら探索した相手方との 直接契約 |
不可 | 可 | 可 |
契約の有効期間 | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 | 法令上の制限はない |
指定流通機構への登録 | 媒介契約締結の日から 5日以内 |
媒介契約締結の日から 7日以内 |
法令上の義務はない |
登録証明書の交付 | 要 | 要 | 不要 |
業務処理状況の 報告義務 |
1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | 法令上の 義務はない |
step3.売却活動を開始
媒介契約を締結すると、不動産会社が土地の売却活動を開始します。
自社のホームページや外部の売り物件検索サイトに物件を掲載したり、新聞折り込み広告を出し、買主を探します。
この間は、売り主が特にすることはありません。
不動産会社から、定期的にセールス活動の報告を受け、市場の反響に対して、どのように売却戦術を変えていくか相談します。
step4.購入希望者との交渉
土地を購入したい方が現れると、「購入申込書」が買主から提示されます。
売主は購入申込書に記載された購入希望価格、その他取引条件、売主が受け入れられる負担なのか検討します。
例えば、境界確定を決済まで行うことや、契約不適合責任(売買の目的となる土地に土壌汚染や地中埋設物などが発見されるなど、契約時の条件に適合しないものが見つかった場合に売主が負担する責任)などについてです。
step5.売買契約締結
売買契約の締結とともに、買主から手付金を受け取ります。
売買契約書は不動産会社が作成してくれますが、売主に課された各種の義務は、きちんと確認しておきましょう。
土地売買の場合、境界確定作業や、私道にのみ面する土地の場合は、「私道の無償通行・掘削承諾書」の策定を、決済・引き渡しの日までに完了させなければならないなど規定が売買契約書に盛り込まれている場合があります。
step6.土地の引渡し
土地売買にかかる残りの代金を買主から受け取り、所有権の移転登記に必要な書類を買主に交付し、土地を買主に引き渡します。
土地を売却して譲渡所得が発生した場合は、確定申告を行い、税金を支払う必要があります。
詳しくは税理士に確認する必要がありますが、譲渡所得の概算は以下のとおりです。
売却価格を含む譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用(仲介手数料などの費用))-特別控除(一定の条件のもとで利用できる場合)
譲渡所得がプラスになった場合は税金がかかります。プラスとなる場合は譲渡所得に税率を乗じたものが税金となります。
相続した土地を売却するときの流れ
相続した土地を売却するときは、土地の登記名義人が実際の所有者と同一か確認をしましょう。
異なる場合は、相続登記が必要となります。
例えば、父親が保有していた土地を相続で承継した場合は、登記名義人を被相続人の父親から相続を受けた方に変更しないと売却ができません。
また、遺言状がない場合は、相続人の間でその土地を誰が承継するか決めておかないと、相続登記はできません。
法定相続分の割合で相続する場合は相続人全員(委任状は可)で法務局に申請しなければなりませんし、だれか特定の相続人が承継するのであれば、相続人間で遺産分割協議を行い書面で取り決めをしなければなりません。
いずれにせよ、相続人全員の合意が必要となるので、司法書士など専門家に相談されるケースが多いようです。
土地の売却で損しないための3つの注意点
土地の売却では以下の3つに特に注意しましょう。
- 契約不適合責任に注意しよう
- 土地の名義を確認しよう
- 土地の境界を正確に確認しよう
なぜ注意が必要なのか、詳しく解説していきます。
契約不適合責任に注意しよう
土地に契約不適合があった場合、売主に落ち度があろうとなかろうと、契約不適合責任を負わなければなりません。
契約不適合とは?
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないこと
買主は、契約解除のほか、追完請求(補修などの請求)、追完がなされない場合には代金減額請求ができます。
売主に落ち度があった場合、買主は損害賠償請求もできます。
土地売却の場合、土壌汚染、地中埋設物(産業廃棄物が地中の埋められていたなど)などが契約不適合に該当すると考えられます。
売主は、売却予定の土地に上記のような問題があることがわかっている場合には、契約前に買主に伝えておき、売買契約書にも記載しておけば、責任を負う必要はありません。
ですので、その土地がどのように利用されてきたかをよく知っている場合には、特に問題になることはないでしょう。
一方、その土地に住んだことがない場合は、契約不適合責任は任意規定となります。
責任を免除して売買契約を締結することも可能です。
その場合、土壌汚染や地中埋設物があっても責任は負わないといった条件を付けて売却することになりますが、価格が多少安くなる可能性があります。
いずれにせよ、不動産会社と相談しながら、契約不適合責任に対するリスクの有無や程度を吟味し、契約条件を考えていくことになります。
土地の名義を確認しよう
建物がない土地、空き家になっている老朽化した家屋付きの土地は、相続などで被相続人から承継したケースが多いものです。
結果、土地の登記名義人が被相続人のままの場合もよくあります。
先述の通り、実際の土地所有名義人に登記を変更しないと売却ができないため注意しましょう。
土地の境界を正確に確認しよう
土地を売却する際は、隣地との境界線と境界点を明確にしなければなりません。
一般的な不動産売買契約には、
「売主は、買主に対し、表記残代金支払日までに、土地につき現地にて境界標を指示して境界を明示します。なお、境界標がないとき、売主は、買主に対し、その責任と負担において、新たに境界標を設置して境界を明示します。ただし、道路(私道を含みます。)部分と土地との境界については、境界標の設置を省略することができます。」
といった条項が記載されています。
あるべき部分に境界標が存在し、売主として所有権の範囲を明示できる状態であれば、測量を行う必要はありません。
境界標があるべきところにない場合、新たに境界標を設置することになります。
土地家屋調査士による測量図の作成、境界標の設置とともに、隣地所有者との現地での立ち会い、隣地所有者に対する境界確認書への記名押印の依頼といった作業が必要になる場合があります。
境界確定費は、新たに設置する境界標の数やそれに関係する隣地所有者の数によって異なります。
一般的な一戸建ての場合、20万~50万円程度であることが多いようです。
境界標を新たに新設しない場合、境界の明示をしない取引方法もありますが、買主は想定している境界線と境界点が担保されないリスクを負うことになるため、価格は下がる可能性があります。
また、境界確定作業の中で、隣地所有者が立会いに応じないケースもあります。
この場合、部分的に境界点と境界線を明示できないという条件付きで取引することになりますが、価格を下げざるを得ないことが多いです。
境界問題は隣地所有者との関係性の良し悪しに関わります。日頃から良い関係を構築するよう心がけたいものです。
土地売却の際の不動産会社の選び方は?
土地売却でとても重要な役割をしてくれる、仲介不動産会社。
なるべくなら良い不動産会社を利用したいですよね。
では、どのように選べばよいのでしょうか?詳しく説明していきます。
複数社に査定を依頼して査定額を確認しよう
一括査定サイトを通じて複数社に査定を依頼したら、そのうちの2、3社から査定価格の根拠や売却戦術について説明を受けるようにしましょう。
その上で、査定根拠に無理がなく、需要動向や競合物件との兼ね合いの中、どういう特徴を売りにしてセールスするかといった考え方がしっかりしている不動産会社を選びましょう。
複数社から説明を受けると不動産会社の比較がしやすい上、自分と売りたい土地に合った不動産会社を選ぶことができます。
売買に強い会社を選ぶ
不動産会社には様々なタイプの不動産会社があります。
戸建やマンション開発を中心に行っている会社、賃貸物件の仲介やアパート管理をメインにしている会社、事業用不動産の売買仲介がメインの会社、住まいの売買仲介がメインの会社などさまざまです。
まずは、売買仲介がメインとなる会社を選ぶことが肝要です。
その上で、その土地が一戸建てを建てて住むための立地や規模ならば、住まいの売買仲介を主に取り扱う会社を、別荘などの土地なら別荘専門の不動産会社、一般個人が取得する土地の2倍以上の規模があるならば、事業用不動産売買の仲介に強い会社といったように、依頼する会社を検討するとよいでしょう。
そういった不動産会社の特性を見極めるためにも、一括で査定を申込むことができ、結果を比較、検討できる一括査定サイトはおすすめです。
土地売却に関するよくある質問
最後に、土地の売却に関するよくある質問をまとめました。
損をしない土地売却のためにも、是非参考にしてみてください。
Q1.土地売却にかかる費用や手数料はどのくらい?
土地売却の費用で大半を占めるのは、不動産会社に支払う仲介手数料です。
仲介手数料は、その上限額について以下の通り規定されています。
200万円以下の金額 | 取引額の5%以内(税抜) |
200万円を超え400万円以下の金額 | 取引額の4%以内(税抜) |
400万円を超える金額 | 取引額の3%以内(税抜) |
一般に、仲介手数料の計算式が「3%+6万円」と言われているのは、上記表で示した上限額の速算式なのです。
重要なポイントは、ここで規定されている仲介手数料は上限額で、これより安くする分には問題になりません。
このほか、売買契約書や領収証に貼付する収入印紙代がかかります。
他にも、測量が必要な場合は測量費用や、老朽化した空き家を解体して売る場合は、解体費用がかかる場合があります。
Q2.土地売却にはどんな書類が必要?
土地の売却に必要な書類は、主に下記のものが挙げられます。
スムーズに売却が進められるように、事前に用意しておきましょう。
必要な書類がない場合は、買主探しを依頼する不動産会社に相談すれば、手続きをサポートしてくれます。
- 登記識別情報通知(または登記済権利証)
- 確定測量図および境界確認書
- 私道の無償通行・掘削承諾書(他人が所有する私道にのみ面している場合)
- 購入時の契約関係書類一式
上記の書類のほか、購入時の契約関係書類一式もあると便利です。
当時の重要事項説明書には、土地に関して、買主が知っておくべき事項が記載されている可能性があり、売却の際に重要な情報となる場合があります。
また、取得時の契約書に記載された当時の土地価格や取得にかかった仲介手数料などは、譲渡にかかる所得税や住民税の計算にあたり、取得費として譲渡価格から差し引きできるもので、取得費が大きいほど税金が少なくなることを覚えておきましょう。
Q3.不動産会社に頼まなくても土地は売れる?
隣の方が土地を買ってくれる場合など、不動産会社に頼まなくても売却すること自体は可能です。
ただし、不動産売買契約上の様々なリスクを知ったうえで契約書を作成したほうがトラブルになりにくい面があり、不動産会社に売買手続きのサポートを依頼するケースが多いようです。
また、不動産会社ではなく、弁護士や司法書士にサポートしてもらう方法もあります。
なお、「専属専任媒介契約」を不動産会社と締結している場合、売主が独自に買手を見つけたとしても、契約している不動産会社を介在させて取引しなければなりません。
Q4.土地の手入れや草むしりなどは必要?
土地を売る以上、その土地は立派な商品です。そのため、見栄えはよくしておいたほうが売りやすくなります。
特に、競合物件が多い、あまり人気のない物件という場合はなおさらです。
自分で手入れしてもよいですし、不動産会社に相談して草刈りを請け負う業者を紹介してもらうという方法もあります。
Q5.土地を売らないほうが良い場合はありますか?
売却する事情や背景には以下のようなものが考えられます。
- 現金が必要
- 将来、その土地を利活用する予定が全くない
- 収益を生まない不動産の保有コスト(固定資産税など)を支払い続けるのは無駄
- 収益を生む別の資産に組み替えたい
- 草刈りや建物の管理をするのが大変(近隣からクレームがあって大変)
こうした売却理由がある場合は、売却を積極的に検討した方がよいでしょう。
たとえ思った金額で売れないとしても、今後かかる金銭的なコストや精神的なコストと比較をし、売却すべきかよく考えましょう。
一方で、売却したい事情や背景がなく、思った金額で売れないことが予想されるなら、無理に売却する必要はないと思います。
まとめ
土地売却の流れについて説明してきました。
土地売却でチェックするべきポイントは、多岐にわたります。
ですから、土地売却は信頼できる不動産会社と相談しながら進めていく必要があります。
信頼できる不動産会社と出会うためにも、一括査定サイトを通じ、複数の不動産会社と接点を持つことが大切です。
それぞれの不動産会社によく話を聞き、自分に合った不動産会社を選びましょう。
監修者
田中 歩(たなか あゆみ)
1級FP技能士、日本ホームインスペクターズ協会公認ホームインスペクター・理事
慶応義塾大学経済学部卒。三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)に17年間勤務後、あゆみリアルティ―サービスを起業。 事業用不動産、中古住宅、投資用不動産の売買仲介・活用・運営・相続コンサルティング、ファイナンスアドバイス等を中心にビジネス展開。日経電子版などにて、不動産関連コラムを連載中。 ■Webサイト あゆみリアルティ―サービス https://www.ayumi-ltd.com/