任意売却ができるのは開札前まで!競売の流れと任意売却の特徴3つ
「競売までの流れを知りたい...」
住宅ローンを滞納し、競売開始決定通知などが届くと「もうおしまいだ」と思ってしまう人も多いと思います。
競売になる前に任意売却を検討するのも一つの方法です。
この記事では競売手続きの流れと任意売却の特徴を説明します。
目次
競売手続きの流れ
住宅ローンの滞納をしばらく続けていると、住宅が競売にかけられて結果的には競売の落札者のものになってしまいます。今回は競売までの流れと任意売却の特徴やメリットを解説していこうと思います。
競売を始めるための手続きの流れ
住宅ローンを滞納し始めて、銀行に何の相談もせず3ヶ月から6ヶ月放置していると、「保証会社」というところが「代位弁済」という手続きを取ります。
これは、住宅ローンを借りる際に「保証料」というものを払った人なら説明されているでしょうが、ローンの支払いを滞納した際に保証会社が債務者に代わって銀行に弁済をするというものです。
代位弁済が完了してしまうと住宅ローンは分割返済はできず、何の交渉もしなければ一括払いするしかなくなります。
通常、住宅ローンを組む際には買った家を担保として差し入れているのですが、抵当権者として登記されているのは「保証会社」になっていることが多いはずです。
これは、抵当権がこういった万が一のための保証としてつけられているものだからであり、実際に抵当権に基づいて不動産を差し押さえ、競売手続きをするのは保証会社またはさらに委託されたサービサー(債権回収会社)だからです。
本来であればこうなる前に、銀行の担当者に早めに返済計画の変更(リスケジュール)などを相談していれば競売まで発展しなかったのかもしれませんが、放置してしまうと銀行側は「支払う意思がない」と判断し、やむなく競売に踏み切ることになります。
どのくらいの期間でここまでに至るかは各金融機関の判断によるところもありますが、だいたい滞納から半年以内くらいには申し立てをするようです。
もし、裁判所から競売の開始決定通知が送られてきた場合、まずは慌てないことです。
競売開始決定が出されても、早くて半年後までは立ち退く必要はなく、それまでに競売を取り下げてもらうための手続きができるくらいの期間があるのです。
以下にまとめます
【1.銀行からの支払い請求】
滞納額や振込期限、何日までに連絡してくださいという連絡事項が書いてある。銀行によっては競売予告をしないところもある。
【2.督促状・催告書】
督促状はローンなどの支払いを期日までに行ってくださいと促す最初に届く文書。催告書は督促状が届いても支払いを行っていない場合に届く支払いを催促する文書。
【3.期限の利益喪失の通知・代位弁済通知】
期限の利益喪失の通知は残りの住宅ローンを一括で支払わなければならないというもので、分割払いができなくなったというもの。
代位弁済通知は保証会社があなたの代わりに住宅ローンの残金を銀行に一括で支払ったので、利息を足して返してくださいという通知。
競売が始まってしまったら、競売を取り下げてもらうには以下の2つの方法しかありません。
一括返済ができる人はほとんどいないでしょうから、結局任意売却に切り替えるしかないということになります。
銀行側には「任意売却する意思がある」ことだけは伝えておいた方がよいでしょう。
競売開始決定通知が届いてから実際に立ち退きの強制執行までの流れ
競売開始決定の通知が届いてから実際に立ち退きまでの流れをまとめます。
【4.競売開始決定通知・執行官の訪問】
競売開始決定通知は保証会社が裁判所へ申し立てをしたことにより「これから競売が始まります」と伝えられる通知です。通知が届いてから1~2ヶ月後には裁判所の執行官と不動産鑑定士が家を訪ねてきて、不動産の価値の調査をします。
【5.期間入札通知書】
決定となった競売の期間が明記された通知書。その名のとおり期間入札通知書が届いたら競売開始目前と思ってください。
まず、競売開始の決定が下されると、裁判所の書記官は法務局に対して差し押さえの登記をしてもらいます。これによりその不動産が競売に入ったという事実が公示されるわけです。
そこから1ヶ月から2ヶ月程度の間に裁判所の執行官と不動産鑑定士が現地を調査します。
場合によっては、そこでご近所などに競売の事実を知られる可能性もあるのです。
そして、そこから2ヶ月から4ヶ月程度を経て「期間入札」といって、この日からこの日まで入札できるということが決定、通知されます。
競売は市場の競りのようにその場で値段を競っていくわけではなく、買受希望者が自分の決めた価格で入札して一発勝負で決まるというものです。
そして一般への物件情報の公開を経てだいたい2ヶ月程度後に実際の入札期日が決まります。もしここで入札者が現れると、最高価買受申出人について裁判所が売却許可決定を出します。
そして、買受人に対して所有権の移転登記がされることになります。
代金が納付された日からもう買受人が所有者ということになりますので、この時点で元所有者である債務者は立ち退かなければならないことになります。
なお、売却代金の配当については裁判所が行いますので債務者自身が動かなければならないわけではありません。
抵当権については順位番号が早い方から配当されていくことになりますが、通常は1番の抵当権をつけている者でも残債務全額の弁済を受けることはできないため、残りは無担保の債権として残ってしまうこととなります。
競売の場合、裁判所が主導で債務者の不動産を売るわけですから基本的に債務者が裁判所に赴くことはせず、強制的に売られてしまうのが特徴だと考えればよいでしょう。
住宅ローン滞納から競売開始までに任意売却が可能な時期とは?
任意売却ができるのはいつからか?ということですが、特に「競売が始まってから」などという制限があるわけではなく、滞納しているまたは滞納しそうなくらい危機的状態であれば、債務者が「売る決心がついた時期」に始めて構いません。
しかし、住宅ローンの滞納から3ヶ月後までには任意売却を検討した方がその後の手続きにも余裕があるので望ましいです。
逆に、もう競売が進んでしまっている状況でいつまでなら任意売却に切り替えることができるかということの方を知っておかなければなりません。
法律的には「開札期日の前日まで」となっていますが、この段階まできてしまったらすでに銀行側では稟議などで決定された事項であるため覆せないということもあります。任意売却の決断は遅くとも入札期日の決定までには銀行側に伝えたいものです。
ただ、競売開始決定からここまでの期間を見ても半年程度はあります。
銀行側の心証としても、早い段階で相談されれば債務者に少しでも多く返済したい気持ちがあるとして、ある程度柔軟な判断をしてくれることもありますが、あまり引っ張ってから競売の取り下げを申し入れられても誠実さが見られないと考えるのは当然といえます。
任意売却は銀行側にとっても物件が市場価格に近い価格で売れて配当が高くなる可能性があるわけですし、債務者側にとっても、普通の売買と変わらないような形で取引できるので心理的な負担が軽減されますから両者にメリットがあるといえます。いずれにせよローンを支払えないことがわかっているのであれば任意売却を検討してみましょう。
競売で抵当権抹消や所有権移転登記をする流れ
不動産登記の変更は債務者と債権者のどちらが行えばよい?
競売の場合の「抵当権抹消登記」、「所有権移転登記」は買受人に売却許可決定を出した後で裁判所が「嘱託」という形で行いますので、当事者が何かをしなければならないということはありません。
任意売却の場合、前記のように通常の取引と同じような形で行われます。
よって、買い手がついたら売主(または代理人)、買主、債権者が集まって銀行で代金の決済手続きが行われます。
そして、不動産に設定されていた抵当権の抹消と買主への所有権移転、買主がローンを組んで購入した場合は銀行の抵当権設定をすべて同日に行います。
一般的に、買主側の不動産業者や銀行が指定した司法書士が行いますので、業者に物件の仲介を依頼すればそれで足り、特に債務者が手配しなければならないものではありません。
登記費用の負担については特に法律で決まっているわけではなく、実務上の慣習として抵当権抹消や売主の住所や氏名変更登記については売主負担、所有権移転と抵当権設定については買主負担ということになっています。
ただ、任意売却が通常の売買と異なるのは、債権者も売却代金によって1番抵当権者すらも全額の弁済を受けられないことが通常であり、2番や3番の抵当権をつけていた消費者金融などは法律では特に規定されていない、いわゆるハンコ代(債権額にもよるが10万円~30万円程度)だけで抵当権抹消に応じていることもあります。
抵当権抹消に必要な登録免許税は不動産1つにつき1,000円なので、土地と建物あわせて2,000円です。司法書士への報酬の相場は1万円前後となります。
登記変更のタイミングについて知ろう!
競売による登記変更は、抵当権の抹消、所有権の移転ともに売却許可決定が出た後で裁判所が法務局に嘱託するため、待っていれば自動的に名義が変わることになります。
任意売却で登記名義を変えるタイミングについては、基本は上記に述べたように通常の売買と変わらず、買主が代金を支払ったことにより所有権が移転するため、支払いと同日に司法書士が登記を法務局に申請することになります。ただ、任意売却に特有の事情というものもあります。
それは、税金滞納により市区町村や県などの差し押さえが入っていることがあることです。
ローンなどを滞納している債務者は多くの場合税金も滞納しており、そのようなケースでは「税金滞納による差し押さえ」がされるのです。
この場合「差し押さえの取り下げ→抹消登記」という手順を踏みます。
抵当権であれば決済当日に抵当権者から抹消の書類をもらい、「抵当権抹消→所有権の移転と連件(申請書を順に並べて所有権移転直前に抵当権を抹消できるようにすること)」で申請します。
しかし差し押さえの取り下げ、抹消登記については市区町村や県などの担当者と協議した金額の振り込みが終わったら、差し押さえ取り下げに関する書類を司法書士が預かって取下書を法務局に出しに行くか、徴収職員が直接法務局に持っていく形になります。
それを受領した法務局はそれから差し押さえの抹消について処理することになるため、抵当権抹消と所有権移転の手続きよりも後に差し押さえの抹消登記が行われます。
ただ、司法書士、法務局、市役所といった専門家や公の部署を介しての手続きであるためイレギュラーな処理でも問題はないわけです。
今まで見てきたように、競売を申し立てられた後でも任意売却に切り替えるのに半年くらいは猶予があります。
しかしやはり任意売却へ債権者の同意を取りつけるためにもできるだけ早めの対処が大切といえますから、任意売却を得意とする不動産業者への相談をしておくことは必須だといえるでしょう。
任意売却3つの特徴
それでは任意売却の具体的なメリットともいえる3つの特徴を見ていきましょう。
1.市場価格に近い価格で売却できる
大きな特徴として挙げられるのはやはり市場価格に近い価格で売却できることです。競売では通常市場価格の5~6割で落札されることがほとんどです。任意売却は手元に費用を残すことも可能です。
2.引っ越し費用を捻出できる
任意売却の場合、引っ越し費用を捻出することが可能なケースもあります。このようなことを可能にするには任意売却に実績のある不動産会社を選ぶ必要があります。
3.その家に住み続けることもできる
前述では引っ越し費用を捻出できると説明しましたが、任意売却では売却した家に住み続けることが可能な場合もあります。
債権者が認めれば、売却した家に毎月賃料を支払いながら住み続けられるというリースバックという方法があります。
この方法をとれば引っ越しをせず、元の家にそのまま住み続けることは可能です。
売却した家に住み続けるリースバックを利用したい場合にはやはり任意売却に実績のある不動産業者に頼むのが得策です。売却後も家に住み続けたい旨を伝えましょう。
任意売却のデメリット
任意売却にもデメリットはあります。具体的には
などのデメリットがあります。特に、任意売却の手続きが遅いと売れない可能性もあります。任意売却の検討が早ければ有利なのはこのためです。
この記事のまとめ
- 住宅ローンを滞納していれば任意売却を検討した方がよい
- 任意売却を検討するなら早めに!
- 任意売却にはいくつかメリットがある
競売の流れは理解できましたか?競売までの期間は意外とありますが、もし任意売却を検討するなら早めに決断しましょう。
任意売却を有利に進めるためにも一括査定であらかじめ自分の家の相場を知っておくとスムーズに売却が進むでしょう。