家の査定ってどうやるの?家の価値を下げないための注意点
家を売却するにあたり「値付け」はとても重要です。
資産価値の高い物件を極端に安い値段にする必要性は少ないでしょうし、逆に問題の多い物件を高額で売り出していたとしてもいつまでも売れ残ってしまうことになります。
物件の査定はとても重要ですが、不動産会社はいったいどのように査定しているのでしょうか。また、どんな点に気を付ければ価値を下げずに済むのでしょうか。
今回は家を売る前に知っておきたい査定のポイントについてご紹介いたします。
目次
家の査定はどんな方法で行うの?
家の査定には大きく分けて「簡易査定」と「訪問査定」の2種類があります。
(1)実物を見ずに机上で査定する「簡易査定」
簡易査定とは、不動産会社に出向くことなく、メールや電話などでやり取りをする査定です。
特に一括査定サイトを利用すれば、スピーディに結果を知ることができます。
無料で利用できるうえ、早ければ当日中に査定回答が出ることもあり、これから売却を考えようとしている人には参考になるデータとなります。
ただしこのデータは簡易査定によるものであるため、建物の状態や立地環境などが必ずしも反映されているわけではありません。
簡易査定で算出された査定額は、訪問査定の額とはもちろん、実際の売却価格とも大きな差が生じる場合が多いことを理解しておきましょう。
簡易査定は何を元に査定しているの?
簡易査定は物件の所在地の他、建物の構造、築年数、面積、3DK、4LDKなどといった間取りを元に、近隣で過去に取引された類似物件の売買事例などを勘案して算出しています。
実際の建物を調査するわけではありませんが、近隣の売買事例は実際の取引においても目安になります。
いきなりいろいろな不動産会社と直接会って打ち合わせをする手間もなく、とりあえず売却を検討してみたいという人にとって有効な手段です。
(2)物件を見て詳しく査定する「訪問査定」
訪問査定とは、近隣の取引事例に加えて、その物件独自の事情を踏まえた査定の方法です。
基本的に、建物の劣化状況や、土地の形状、接道状況、日当たり、そしてインフラ(上下水道やガス管など)の整備状況、周辺施設を調査します。
また、近隣との土地境界が明確になっているか、土地や建物について法務局に登記されている名義や情報は正しいか、建築関連法令に違反していないか、再建築が可能な物件であるかなどを行政機関に確認し、その結果も査定価格に反映されていきます。
これらの訪問査定は一般的に現地での調査(1~2時間程度)の他、行政機関等にも確認してから回答する場合もあるため、査定が出るまで数日から1週間程度かかることもあります。
訪問査定ではどこを見るの?査定のポイント
一般的には築年数が古いほど建物の資産価値は減少し、また建物が傷んでいるほど修復費用等がかさむため資産価値が少ないという査定になります。
特に耐用年数を過ぎている建物は建物分の資産価値はないものとして扱われ、むしろ解体して更地にする費用がかかる分、更地よりも査定価格が落ちる傾向があります。
また交通の利便性の他、日当たりの良さや、豪雨時の浸水リスクの少なさといった立地環境も査定金額に大きく影響します。
その他、重要視されるポイントとして、以下のようなものがあります。
- 土地に接続している道路が建築基準法上の道路であるのか
- 建築確認の手続きを行っていない建物や増築部分はないか
- 道路や隣地との間にガケ状となっているところはないか
- 擁壁やブロック塀がある場合は適正な工事となっているか
- 破損しているところはないか
おすすめの査定方法は「不動産一括査定サイト」
信頼できる不動産会社がいて、相談できる環境にある場合心配ありませんが、初めて家を売却しようとしている人にとって、不動産会社探しは不安が多いものです。
そんなときは「不動産一括査定サイト」を利用してみましょう。
一括査定サイトについて少し解説していきますね。
一括査定サイトのメリット
物件の所在や土地・建物の面積、その他必要な情報を入力して、いくつかの質問に答えていくことで簡易査定をしてもらうことができます。
また、追加の質問や相談についても電話やメールで対応できることから、直接担当者と会わなくてもある程度のやり取りができ、忙しい方はとくにおすすめです。
必ず複数社の査定結果を比較しよう
複数の不動産会社の査定結果を知ることができるのも一括査定サイトのメリットです。
特に物件の相場を知るためには複数の意見を聞いておいた方が良いでしょう。
簡易査定の結果を踏まえ、訪問査定を依頼する場合においても、複数会社の査定価格を見比べていくことで、査定根拠が妥当であるかどうかの判断基準となります。
著しく高い査定金額であったり、極端に低い査定金額であった場合、その金額を提示した会社に理由をしっかりと聞いておくとよいでしょう。
査定価格の一番高い会社がその物件を絶対に高く売ってくれるとは限らず、相場や販売活動の状況によっては結局大きな値引きをしなければならない場合もありえます。
そういった点からも複数会社の査定金額と査定根拠の比較を行い、納得できる説明をしてくれる会社を選んでいきたいものです。
イエトク編集部おすすめの一括査定サイト4選
サイト | 特徴 | リンク |
---|---|---|
SUUMO 売却査定 |
・イエトクおすすめ!日本最大級の不動産売却査定サイト |
公式サイト→ |
LIFULL HOME’S |
・匿名で査定依頼が可能なのはここだけ |
公式サイト→ |
イエイ | ・専門家に無料で相談しながら査定に進める |
公式サイト→ |
HOME4U | ・実績重視で厳選した不動産会社と提携 |
公式サイト→ |
イエトク編集部では、数ある一括査定サイトの中でも上記の4サイトをおすすめしています。
それぞれの詳細については、初めての方におすすめ!不動産売却の進め方&不動産会社の選び方でご覧ください。
家の査定額の算出方法は3つ
不動産の査定をするとき、物件そのものの状況によって金額は上下しますが、査定額のベースとなる資産価値を算出する方法は大きく以下の3通りあります。
- 取引事例比較法
- 原価法
- 収益還元法
それぞれについて詳しく解説していきます。
(1)取引事例比較法
取引事例法とは、過去の不動産事例の中から、売却を予定している物件と似た取引事例を収集し、それらの取引ごとの地域性や、取引事情や経済情勢を踏まえながら、査定額を決定する方法です。
中古住宅の売買ではこの方法による査定が一番多く見受けられます。
取引事例比較法による注意点は、査定人の主観で大きく金額差が生じる可能性が高いことと、地域によっては過去の取引事例が少なく、必ずしも適正な不動産査定とならないことです。
(2)原価法
原価法とは、対象となる不動産を新築で取得する場合の価格(再調達原価)を計算し、それに対して建築後の劣化を反映(減価償却)して、現時点で価値がどの程度かを計算する方法です。
取引事例比較法の弱点を補うために、この原価法を併用して査定する場合もあります。
建物の構造や用途によって耐用年数が定められており、木造の戸建てなどは22年、鉄筋コンクリートのマンションなどは47年程度となっております。
家を売却するには、土地と建物を一括して売却することが一般的ですから、土地と建物の価格をそれぞれ算出して、建物の減価償却計算が適切に行えることが原価法を利用するための絶対条件となります。
(3)収益還元法
収益還元法とは、これまでの算出方法と異なり、投資額(購入価格及び維持費用)に対して将来のリターン(賃料収入や事業収入)がどの程度見込めるかを算出して、対象となる不動産の査定をする方法です。
自らが住むのではなく他人に貸す(賃貸経営)、あるいは事業に活用する収益物件(投資物件)を査定する場合に、取引事例比較法や原価法よりも合理性が高く、客観的な査定として重要視されます。
売却したい物件の事情や地域性などを考慮し、不動産会社がいずれかの方法を元に査定しています。
その算出根拠をしっかりと確認し、会社を選ぶ際の参考知識としておくと良いでしょう。
家の査定依頼をする前に準備しておくこと
家の査定依頼をする段階になったら、以下のような準備をしておくと安心です。
(1)家の査定に必要な書類を準備しておく
家の査定をより正確に行ってもらうために、建物を新築したときの確認済証や確認申請図面の他、増築やリフォームをしている場合には、それらの見積書・請求書や図面などの工事箇所がわかる資料を用意しておきましょう。
また、耐震調査やアスベスト調査を実施しているのであれば報告書を提示することが望ましいです。
地積測量図や土地の境界確認書がある場合は、それも用意しましょう。
近隣と土地境界のトラブルがないことがわかれば、査定上有利になります。
他にも、当該不動産を取得したときの売買契約書や重要事項説明書が残っているのであれば、物件の状況を理解するのに役立ちますので、提出するようにしましょう。
関連記事:専門家監修|不動産売却の必要書類をフェーズ毎に解説!チェックリスト付き
(2)自分でも相場感を把握しておく
不動産会社との査定の前にやっておきたいこととして、相場感を調べておくことをおすすめします。
提示された査定金額は相場よりも高いのか、あるいは低いのか、査定金額の理由を説明されたときに納得できるかどうか、妥当であるかを判断する際に役立ちます。
自分で簡単に相場を調べる方法
「専門家でもないのに相場なんてわかるわけない…」と不安な人もいるかもしれませんが、実はちょっとした手続きで、家の相場を調べることができます。
以下に、いくつかの不動産情報サイトをご紹介します。
正確な相場を調べようとして、ひたすら時間をかけるのではなく、現在売り出し中の不動産物件はどのようなものがあるのか、過去の取引事例はどの価格帯のものが多かったのか、などを中心に見比べる程度でもOKです。
簡単に調べられるおすすめの方法は、インターネットで売りに出されている不動産情報を検索できるポータルサイト(SUUMOなど)で売り出されている、自分の不動産と似た条件の物件を調べることです。
他にも、不動産会社が利用するデータベースから算出した「Reins(レインズ)Market information」を利用すると、過去1年の近隣取引情報が一覧で表示されます。
おおよその土地面積や建物面積、駅からの距離(徒歩〇分以内)、間取り(3LDKなど)といった情報が出ています。
ただし、個別の物件の事情(建物の傷み具合や周辺環境)などは掲載されていませんので、あくまでも参考程度に見ておきましょう。
また、国土交通省が提供している「不動産取引価格情報検索」では、地図から過去の取引物件を探すこともできますので、上記のポータルサイトなどと照らし合わせて、自分の不動産物件に近い事例を見つけておくとよいでしょう。
(3)住宅ローンの残高を調べておく
自宅を売却する際、住宅ローン残債があり金融機関の抵当権が残っているケースも多いはずです。
不動産を売却するときはローンを完済し、抵当権を抹消する必要があります。
一般的には売却代金や、売却代金と自分の預貯金を合わせて残りのローンを一括返済する手続きをする方が多いです。
住宅ローンを完済できるか(不動産を売りに出せるのか)どうかの判断目安にもなるため、事前にローン残高はしっかりと確認しておきましょう。
また、不動産会社に査定を依頼する際に、住宅ローンが残っていることを伝え、ローン完済に向けてのアドバイスをもらうようにしてみましょう。
担当者の提案力や説明力を見定めるきっかけにもなるかもしれません。
(4)家の欠陥(瑕疵)を正直に伝えるためにチェックしておく
家の欠陥(瑕疵)や、今まで発生したことのある不具合(雨漏りやシロアリ被害など)を内緒にして査定してもらうのは絶対にやめましょう。
査定で高く評価されたからといって、査定額が売却額となるわけではありません。
あとから不具合が発見された場合、契約直前に売買契約が減額されたり、売却後に修理費用や違約金を支払うことになる事態になる可能性もあります。
むしろ積極的に不具合や過去の修理履歴を開示し、それらの不安を補うための販売方法を不動産会社から提案してもらいましょう。
特に、建築士による「建物状況調査(インスペクション)」の利用や「中古住宅売買瑕疵保険(売却する建物に欠陥があった場合に補償してくれる保険)」の加入も考えてみることをおすすめします。
建物の維持管理上、修理しておいた方がよい箇所を特定してもらい、必要に応じて修理やリフォームの実施を検討するようにしましょう。
家の査定に関するよくある質問
Q)家の査定前に掃除は必要?
査定の段階では必ずしも掃除しておく必要はありません。
ただし、家財や家具などは売却時に自分で処分するのか、不動産会社に処分を依頼するのかを査定時に伝えておきましょう。
その後、不動産売却が決定し、引き渡しするときまでに室内をきれいにしておく必要があります。
自分で掃除する余裕がないときはハウスクリーニング会社を利用することになるので、必要に応じて、査定時にそれらの予算も見込んでおいてもらうと良いでしょう。
Q)家の査定は匿名でできるの?
一般的に、一括査定サイトでは「名前」「メールアドレス」「電話番号」などの個人情報を入力する必要がありますが、中には、LIFULL HOME’Sなどの匿名で利用できるサイトもあります。
しかし、一括査定サイトでの査定はいずれも簡易査定になることから、実際の売却価格とは大きく異なる点は考慮しておきましょう。
特に、売主は気が付かないような瑕疵についてなどは、訪問調査で判明し、査定金額のアップダウンに影響するチェック事項もあります。
より具体的な査定金額を知るためには、実名になりますが、「訪問査定」を依頼するのがおすすめです。
Q)査定してもらった金額で本当に売れるの?
査定金額はその不動産会社が購入検討者に対して購入を促す金額であって、実際の売却金額ではありません。
粗悪な不動産会社は相場よりもわざと高い査定金額を提示し、「当社なら高く売れる!」とアピールし、売主と仲介契約を結びます。
そしてその金額では買主が見つからず、売主に売却価格を引き下げるように仕向ける会社がいます。
仲介契約を解除しようとすると、今までかかった営業経費を支払うよう請求されるため、結局のところ他の不動産会社に仲介依頼ができない状況に追い込まれるという手口も見受けられます。
査定してもらうということは売却見込み額を知るためということだけではなく、売り出し価格の目安を知ると同時に、不動産会社の説明力や提案力を把握するためだと理解しておきましょう。
まとめ
今回は家を売却するときの査定についてご紹介しました。
不動産の売買金額には建物の劣化状況だけでなく、隣地及び周辺の環境や建築法令、民法などの事情が複雑に絡み合うため、査定金額はちょっとしたことで変わってきます。
また、売主や買主の事情によっても売買金額や売買条件は異なるため、査定金額だけに注目してしまうと売却に時間がかかり、売れ残ってしまうリスクが高くなります。
家を売却するうえで重要なことは、査定額を高くすることではなく、売却した後に支払う仲介手数料や補修費用、諸費用、税金を差し引いたお金(すなわち手取り額)を最大化、あるいは損失を最小化することにあります。
不動産会社とコミュニケーションをとるきっかけ作りとして、一括査定サイトを利用するなどして、適切な査定金額を算出してもらうようにしましょう。
監修者
大野 光政(おおの みつまさ)
一級建築士、宅地建物取引士、既存住宅現況検査技術者
大金興業株式会社代表取締役。 建築士事務所、不動産業、建設業などの業務をマルチにこなす一方で、建築や設備に関連する資格を多数所持していることを活かし、2006年から生活情報サイト「All About」の公式ガイドとして建築・リフォームなどの記事を執筆。 一般消費者に建築や不動産に関わる話をわかりやすく親しみやすく伝えることをモットーとしている。 ■Webサイト 大金興業株式会社 https://www.daikin-i.com/